遺産並びに贈与税と米国居住者と非居住者に関して:
上田稔 CPA
死を考えるのは早すぎると考える方も多いとは思いますが、死の確率は1です。確実に我々に訪れる現象であります。従って、日頃の準備は必要と考えます。以下、米国の 遺産と贈与に関する税法の概略を説明します。
まず、遺産と贈与関係に関する法令は:(SUBTITLE B-ESTATE AND GIFT TAXESとあり、そのsubtitle BのCHAPTER 11がESTATE TAX,遺産関係であり、CHAPTER 12が贈与税に関する法令です。)そのChapter11の内のSub-chapter Aの中のセクション2001の(a)によれば、非居住者が米国の居住者となった時点で、その人の全世界の収入は米国での課税対象となります。同時に、米国における遺産並びに贈与税も関係してきます。ここで注意しなければならないことは非居住者が永住権をもって、居住者になった場合と、単に税法上、非居住者が居住者と見なされて、居住者扱いになるのとでは税法がかなり異なることに留意するべきです。また、所得税法上での居住者の定義と遺産並びに贈与税法上での定義とは異なります。遺産並びに贈与税法は所得税ではなく、資産移転税(transfer tax)下にあるからです。留意しなければならない点は米国では被相続人が課税されます。通常のケースでは、税を支払うのは被相続人であり、相続人ではありません。日本の場合は、遺産課税方式ではなく、遺産取得課税方式を採用し、相続税は被相続人からの財産の取得に対して課税されるのです。取得者が税を払います。留意が必要です。また、遺産並びに贈与税法下では米国居住者の定義が所得税法下とは些か異なります。重複するヵ所も、場合も、あります。セクション2001(a)は米国市民並びに米国居住者である被相続人の課税対象にあたる遺産の移転は課税されると定義しています。Regulation と呼ぶ行政規則のReg.Sec.20.0-1(b)によれば、 2001(a)の対象となる米国居住者、resident (居住者)とはその人が死亡した時に米国にdomicile(ドミサイル)があった人としている。ドミサイルとは日本語で本居地、すなわち、人が固定的な生活の本居を持っている場所であり、且つ、そこを離れても、またそこに戻る意思(intent)を持っている場所であります。米国は合衆国でありますから、現在の各州は独立した国家であった時期もある関係から,residence,domicileの関係が税法上、大変複雑です。(ここら辺の雰囲気は、このウエブの小生の”米国税法の歴史”と題する小論文をご参考にして下さい。)
以下、読みやすくするために、米国税法令へのレファレンスをなるべく省略して書きますが、いずれも、本文はRegulation(規則)の各section(法律の条とか節)をもとに書いています。さて、その人が死亡したときに、米国にドミサイルがあったとすると、不動産、人的財産、有形財産、無形資産、それらが地球上のどこにあろうと、その死者の総遺産に、その全価値は含まれなければなりません。では、死者が非居住者であり且つ米国市民でない場合で、米国で死亡したとなる場合はどうなるかといえば、米国で報告すべき総遺産はその死者の米国に存在する財産です。最近はやっている、日本人のハワイの別荘所有、日本人のハワイにあるコンドはその人がハワイで亡くなった場合、その死者の米国における総遺産の中に含まれることになります。ただし、日本国は米国と遺産税の租税条約を提携していますから、この条約に従って、租税義務を進めることになります。ここでは詳細しませんが、日本の相続法に国外財産の5年ルールと呼ばれる法令があります。このルールも影響してきます。ここでは説明しません。
さて、このドミサイルという言葉ですが、日本語訳の”本居”と翻訳したところで、意味を成すものではありません、従って、ここで、米国の税法用語上でのドミサイル、domicileとそれに絡んでくる”居住地”residenceの意味と、前にも書きましたように、それらの相続税法上での意味と所得税法との差異を書きます。
DOMICILE
Domicil(e),この単語、語尾にeがあっても、なくても正しいスペルです。ポピュラーなのはeがついたほうです。さて、DomicileとResidenceは同意語ではありません。英語ですから、英語でまずresidenceとdomicileの違いを説明します、この方がわかりやすいかもしれません。Residence comprehends no more than a fixed abode where one actually lives for the time being. It is distinguished from domicile in that domicile is the place where a person intends eventually to return and remain.これが、判例などに出てくる表現ですが、さらに、Restatement of Conflict of Lawsのsection 9によれば、More specifically, domicile means "the place with which a person has a settled connection for certain legal purposes, either because his home is there, or because that place is assigned to him by the law."とあります。 これは英語ですから、英国ではdomicileをどう表現し、英国と米国では相違はあるのかと調べてみると、英国ではdomicile means " the country that a person treats as a permanent home and to which he or she had the closest legal attachment." 米国でも英国でも、そこにはその人のintentの存在が,いやintent(ion)の存在があることがわかります。そうすると我々日本人はここでintentとintentionの意味を考えてみる必要があると考えます。それでは、intent とintentionの意味はといえば、ある有名な法律家の意見によれば、”intention cannot be satisfactorily defined and does not need a definition, since everyone knows what it means"ともいわれ、またintentとintentionでは内包的な違いがあります。例えば、”one has evil intent, but good intentions." Intentionにはある概念に含まれる属性を言外に”ほのめかす”とでも言いましょうか、connotative(共示的な、内包的な)な意味があるのですです。それでは、intentとは何ぞやということになりますが、
ここではintent とはthe state of mind accompanying an act.ということです、行動を伴なう心の状態。この心の状態に従って”決意”を表している色々な行動の証拠がdomicile とresidenceの違いを決めます。以上を念頭に置きながら、以下をお読みください。
米国連邦所得税上の米国resident(居住者)の意味。
居住者であるかどうかを分析することの大切さは、その人が住んでいるところが単に〝居所”(residence)ではなく、そこを離れても帰来する意志(intent)を持っている”本居”(domicile)となる場所でもあるかもしれないことにあります。内国歳入法典のセクション7701(b)に税法上の居住者と非居住者の定義があります。居住者であるには以下の3項目を満たしているかどうかです:
1.the green card test(グリーンカード、永住許可証)
2. the substantial presence test(実質的存在)
3. the first year election test(初年度選択)
ただし、租税条約上の条文がこれを覆す場合があることに留意してください。
グリーン・カード テスト
これは外国人登録証明書を取得した人で、年間を通じて、米国に居住しているとみなされます。A Lawfully permanent residentですと、この人は米国の移民法に基づき、移民として米国に永久に居住する、法的に許可された特権を持っている人です。言い換えれば、グリーン・カードを保持しているということになります。これは居住のステイタスということになり、このステイタスは無効になるとか、管理上または法律上、放棄されたとみなされない限りにおいて、継続されます。グリーン・カード保持者の居住が始まる年の最初の日にちは、下記に述べる、2のthe substantial presence testを満たしていない場合、永住権保持者として、米国にいる最初の日ということになります。なぜこのようなことを書いたかといえば、移民関係の書類に”最初の日”と題する項目がよくあるからです。
2.The substantial presence test
内国歳入庁法典のセクション7701(b)の中心ともなる議題です。このテストを満たすには、まず本年、米国に少なくとも31日滞在している、そして本年の最後の日、12月31日からさかのぼって3年間の間に、加重平均で計算して、少なくとも183日に米国に滞在している。加重平均の計算方法は、まず、本年の滞在日数に1を掛ける。前年の滞在日数に3分の1を掛ける、その前の年の滞在日数に6分の1を掛ける。数式で説明しますと、例: 2016年の滞在日数を120日、2015年の滞在日数を120日、2014年の滞在日数を120日、とします、
120x1+120x1/3+120x1/6=180日となります。これでは条件を満足していません。それでは、各年の滞在日数を122日とすると、122x1+122x1/3+122x1/6=183日となり、米国居住者としての条件を満たします。3年間続けて、最低122日滞在していれば、183日の条件は満足できるということになります。それでは、183日は絶対条件かというと、そうではなく、例外があります。本年度の滞在日数が183日以下で、外国が米国よりもっと密接な関係にある人の場合は米国居住者としての条件を満たしません。ただし、上記の計算方式以外の方法で、米国居住権を得た場合は、この例外は該当しません。また、病気などの理由のため、米国を離れることが出来なかったために、米国滞在日数が計算方程式の183日を満たしたとしても、実質的存在とは認められません。
実質的存在を満たしたされる最初の日は183日計算方程式を満たした瞬間の日です。実質的存在テストが誰にでも適応されるかというと、そうではなく、このテストから免除されているのは、外国政府関係者、学校の先生、学生 または慈善団体主催のスポーツ・イベントで米国に来ている運動の選手などです。外国政府関係者とは外交官、国連などの国際団体関係者・大使館職員・領事館職員のビサ入国者とその家族を指します。学校の先生、学生とは移民法下で米国に一時的に滞在している個人で、この部門の移民法の条件を満たしている者です。カナダとかメキシコから米国に仕事のために通勤している者は米国滞在とは認められません。旅行者などで、米国を通過する時間が24時間以内の場合は滞在とはなりません。
3.The first-year election test (初年度選択テスト)
米国の”居住者である”と選択することも出来ます。それには、ある条件を満たさなければなりません。条件の第一はグリーン・カード・テストには合格できない、並びに、居住を選択する年又はその前年もsubstantial present test(183日テスト)を満たすことは出来ない、しかしながら、”居住者である”ことを選択した、そして、その選択の翌年には183日テストを満たすことが出来る、これが第一条件です。次に、居住選択年に少なくとも31日間、米国に滞在し、且つ又、このテスト期間中、少なくとも、その期間日数の75%は米国に滞在していなければない。このテスト期間が始まる日(数え始める日)は”31日”期間を数え始める日からで、その日から居住選択年の12月31日までをテスト期間の最後の日とする。75%テストを適用するにあたり、実際に米国に滞在していない期間の最高5日間までは米国に滞在しているとして処理されます。初年度選択テストを選んだとすると、居住者扱いとなるのは、31日テストと75%テストの両方を満足させる一番最初の米国滞在期間が始まる最初の日からです。初年度選択をした年の税申告書に選択を表示します。初年度選択後に続く183日テストを満足させた後でないと、選択は許可されません。一度、選択を選びますと、これを無効にするには、内国歳入庁の許可が必要となります。
租税条約
日米間の租税条約上の規定または条項は上記した内国歳入法典、つまり、連邦政府の全ての内国税を規定する法典を乗り越える場合があります。租税条約上、内国歳入法典下で、居住者扱いとなるにもかかわらず、租税条約上、非居住者扱いとなることもあります。従って、その人の国籍上での、その国の中での税法上での地位を明確にしたうえで、租税条約上を照らし合わせながら、居住の地位を決めるべきです。それでは両国が法律上、どちらの国もその人を居住者としているとします。そのような場合のために、租税条約にはタイブレイカーという条項が用意されています、日米間には”所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約”があり、その第四条に”一方の締約国の居住者”が定義されています。簡単に書けば、その国の居住者とはその国に、パーマネントな、永続的な家庭を、家を持っていることです。ですから、これを実証する決め手を数々上げていくことにより、居住を判断することになります。では、両国にパーマネントな家を持っている人はどうなるのでしょう?その様な場合は、その人の経済活動の本拠地、つまり、生活のためのお金はどこから得ているのかという、人間の生きる手段を得る場所が決め手となります。では、どちらからも50%づつ得ている人はどうなるのでしょうか?決めてはその人の生活習慣はどちらの国にあるかが決め手になります。では、生活習慣はどちらにもある、いや、どちらにもないとする場合、どうなるかといえば、ここではその人の国籍が決め手として浮上します。では、2重国籍の人はどうなります?この場合は両国の政府の責任者間の話し合いということになります。ですから、内国歳入法典上、つまり所得税法上、自動的に米国居住者とみなされるグリンカード保持者であっても、租税条約上、居住者とは限らないのです。上記したように、米国における時間など、そして租税条約上のタイブレイカー条項も考慮しなければなりません。
それでは居住ではなく本居(ドミサイル)とは何かを考えてみます。
しかし、ここで,英語のresidenceとdomicileが日米の条約上、日本語でどう表現してあるのかのを確かめます。米国側の租税条約の”article 4, section 1.”,日本側の日本語でいう”第4条 の1.”の最初の部分を下記します:
Article 4
1. For the purpose of this convention, the term "residence of a contracting State" means any person who, under the law of that contracting State, is liable to tax therein by reason of his docile, residence, citizenship, place if head or main office, place if incorporation, or any other criterion of a similar nature, and also includes:等々と続きますが、
この部分の日本語での対訳は以下の通りです:
第4条
"1.この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、市民権、本店又は主たる事務所の所在地、法人の設立場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税をうけるべきものとされる者をいい、次のものを含む。":とあります。従って、以下、"residence"を”住所”とし、"domicile"を”居所”と表現しますが、この”居所”なる表現は、我々、一般人には、どうも、”本居”と表現した方がわかりやすく感じられますので、本文中、ドミサイルなる英語を”本居”と表現いたします。
ドミサイルの定義
米国のドミサイル、”本居”という言葉の意味するところを書いてみます。 内国歳入法典の補填説明をする指導原則であるregulationのsection 20.0-01(b)”と25.2501-1(b)が説明する”domicile", ”本居=居所”の解釈を翻訳すると、”現在住んでいるところから将来、確実に移転するという、現時点での移転意図はない心の状態で、その場所に、わずかな期間でも住むことにより、人は本居を得る。そこに無期限に居残るという必須な意図のない居所は本居(ドミサイル)を構成するには充分ではないし, 同時に、単に本居を変えるという意図があるだけでは、実際に本居を変えることにはならない。意図と同時にそこから移動することが本拠を変えることになる。参考のために、以下が本文の抜粋です。
(b) Scope of regulations—(1) Estates ofcitizens or residents. Subchapter A of Chapter 11 of the Code pertains to the
taxation of the estate of a person who was a citizen or a resident of the United States at the time of his death.
A ‘‘resident’’ decedent is a decedent who, at the time of his death, had hisdomicile in the United States. The term ‘‘United States’’, as used in the estate tax regulations, includes only
the States and the District of Columbia. The term also includes the Territories of Alaska and Hawaii prior to their admission as States. See section 7701(a)(9). A person acquires a domicile in a place by living there, for even a
brief period of time, with no definite present intention of later removing therefrom. Residence without the requisite
intention to remain indefinitely will not suffice to constitute domicile, nor will intention to change domicile
effect such a change unless accompanied by actual removal. For the meaning of the term ‘‘citizen of the
United States’’ as applied in a case where the decedent was a resident of a possession of the United States, see
§ 20.2208–1. The regulations pursuant tosubchapter A are set forth in §§ 20.2001–1 to 20.2056(d)–1.
以上の文章の主要なポイントを英語で、要約すれば、
*simply the intention to change domicile is not going to actually change your domicile. Intention and then moving away changes your domicile.
さらに、わかりやすく、それらを方程式化すれば以下のごとくになる:
(residence) +( intent to stay indefinitely) = domicile
(住所)+(無期限にそこに住む意志)=本居
(removal) +( intent to change) = changing domicile
(移る)+ (変えるという意図)=本居を変える。
ということは、規定によれば、米国においては、人はある場所に住んではいるが、そこは住所であり、本居は他にあるということもあるということですし、住んでいるところが本居であり、住所ではないという場合も出てきます。以上、所得税法ですが、移転税法下(遺贈などの場合)では、もしその人に米国に居住する意図がないのであれば、”米国に住んでいる非居住者”とみなされます。このような場合、事実関係が決め手となります。それでは、最高裁での本居の定義はどうであるかといえば、”そこに制限のない期間、とどまっているという意図の明白なそして信じるに足る証拠が付随しているある特定の場所にある居所が本居である。”と決しています。 それではそのような証拠とは何かといえば、毎年住んでいる住居の存在、選挙の投票権、税金の申告場所、不動産権の所有、運転免許書、車の登録証書、婚姻関係、雇用関係等々となります。
以上、所得税下と租税条約下ににおけるドミサイルと住所、domicile とresidenceを説明しましたが、今度は遺産、相続及び贈与に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約下におけるドミサイルと住所の問題を考察してみます。昨今、かなりの日本人がハワイなどに住居を購入しております。そんな時、ある日突然、死亡した場合、国際的な遺産、相続、贈与などの問題は浮上してきます。
この日米間の条約の第三条の1を下記します:
(1)被相続人がその死亡の時に若しくは贈与者がその贈与の時に合衆国の国籍を有し若しくは合衆国内に住所を有していた場合、または被相続人の遺産の受益者がその被相続人の死亡の時に若しくは贈与の受益者がその贈与の時に日本国内に住所を有していた場合は、これらの時における次に掲げる財産又は財産権の所有地は、租税の賦課及び第五条によって認められる税額控除については、もっぱら次に定めるところに従って決定されるものとする。
(注:米国側の文章と対比してみますと、ここで上記中の”住所と有して”とある"住所"の英語はdomicileであり、residence でないことに留意ありたい。)
(a)不動産または不動産に関する権利はその不動産に係る土地の所在地。
(b)有体動産(通貨及び発行地で法貨として認められているすべての種類の貨幣を含み、本条において他に特別の規定がある債権を除く。)はそれが現実にある場所にあるものとし、運送中のである場合には、目的地にあるものとする。
(c)債権(債券、約束手形、為替手形、銀行預金及び保険証券を含み、債券その他の流通証券で持参人払式のもの及び本条において他に特別の規定がある債権を除く。)は、債務者が居住(resides)する場所にあるものとする。
(d)-(k)その他、のれん、著作権、漁業権、特許権とかいろいろありますが、ここでは省略いたします。
以下、参考のために、第三条の1の米国側の文章を書きます,
無論、当然同じものですが、使われている主要な単語の翻訳がわかります;
ARTICLE III
(1) If a decedent at the time of his death or a donor at the time of the gift was a national of or domiciled in the United States, or if a beneficiary of a decedent's estate at the time of such decedent's death or a beneficiary of a gift at the time of the gift was domiciled in Japan, the situs at the time of the transfer of any of the following property or property rights shall, for the purpose of the imposition of the tax and for the purpose of the credit authorized by Article V, be determined exclusively in accordance with the following rules:(a) to (k).ということになります。
以上のように、不動産の場合、その人が死亡時に米国にドミサイルがあると判断されれば、その土地の所在地が決め手となる。債券であれば、債務者が居住する場所にあるもとする。
それでは非居住者でありながら、米国での死亡時に、本居が米国にあるとされる場合の人の所有している米国に帰属する資産の遺贈はどうなるかといえば、米国の相続法に従うとされる。ここでもドミサイル、本居がどこにあるかということが、非居住者であるよりも優先される。米国に帰属する資産とは米国に所在する不動産や有体動産、米国法人の債券、米国政府や米国人の債務です。また、ここでいう所有とは、死亡時から数えて3年前における間の資産の移行は死者の遺産に加えられる。遺産に加えられない資産は米国外にある不動産や有体動産、米国での取引または商売から生み出されたお金のの米国預金以外の米国にある預金(米国内外を問わない。)、外国証券、債務、並びに債務者が米国人であっても、内国歳入法典の1441から1443の第3条に該当しない”ポートフォリオ・金利、米国居住の非居住者外国人の生命保険からの入金、米国に展示に貸し出されている美術品、などです。米国居住の非居住者外国人の遺産・相続税控除額は$13,000ですが、これは税控除額ですから、遺産の額の$60,000に相当します。グリーンカード保持者のような永住権を持っている人の遺産の控除額は2016年では$5,450,000ですから、大差があります。しかし、米国に居住している非居住者外国人が米国で死亡した場合、葬式代は控除になりますし、米国の総遺産に対する借金にあたる額は控除になりますし、米国の慈善事業団体への寄付金、生存配偶者が米国市民である場合、配偶者控除があります。これは連邦遺産・贈与税制下では、夫婦の一方から他方への財産の移転は枠以内であれば、原則として非課税であり、この原則が非居住者配偶者から米国市民の生存配偶者にも適応されます。
総遺産額 xxxx
控除:
経費、債務、税金 xx
損失 xx
公益遺贈 xx
配偶者控除 xx xxx
課税遺産額 xxx
加算:1976年以前の課税贈与額 xx
課税基準額 xxxx
基準額に対する暫定税額 xxx
控除:
支払い済み贈与税額 xx
その他の税控除額 xx xxx
支払い税額 xxx
以上が通常の場合の連邦遺産税の計算の方程式です。
さて、それでは非居住者外国人がドミサイルを、租税条約の文章の中で表現されている”住所”を米国と選択する前に、またはそうなる前に、遺産相続の観点から自己の資産を検討して、遺産税に対するプラニングしてみる必要があります。米国では前にも書きましたように遺産税は所得税ではなく、遺産移転税です。資産を移転する権利に対する課税であります。この税金は相続する人が支払うのではなく、被相続人がその資産を移転することに課税が起きるのです。前記しましたように、米国に住んでいる非居住者は米国に存在する不動産と有体動産の贈与に対してのみ課税されます。それ以外の資産の贈与に対しては課税されません。例えば、米国株券、ミューチュアルファンド株券、債務証書、などは贈与課税対象外です。そうすると、不動産と有体動産をドミサイルを米国に移す前に贈与してしまうか、売却し、そのお金を贈与してしまえば、贈与税を避けることが出来ますが、もし贈与先が米国人又は米国永住者であった場合、そしてその金額が$100,000を超えている場合、贈与を受けた人はフォーム3520にてその旨を報告する必要があります。
フォーム3520、Annual return to report transactions with foreign trusts and receipts of certain foreign giftsがこの報告書の名前です。ここで遺産関係の信託に関して、少々、説明いたします。
Qualified Domestic Trust 略して,(QDOT)
この信託は生存した配偶者が外国人であった場合、遺産や贈与を移転し、遺産額や贈与額の課税額を算定する場合、無制限の金額の配偶者控除が出来る制定法上の信託です。この信託の呼び名は、通常、”QDOT”と略して使われます。発音は”キュー ドット”です。信託がQDOT型の信託であるためには以下の4条件を満たさなければなりません。
1.財務省規則に例がとして乗せられている事項を除いて、この信託は少なくとも受託者の一人は米国市民または米国法人でなければならない。
2.信託証書は信託財産の本体の分配にかかる遺産税の源泉徴収をする義務は米国人受託者にあることを定めていなければならない。
3.この信託は信託に課せられるすべての遺産税の徴収を確保することを公表している規則に従っていなければならない。
4.遺贈者の遺言執行者はこの信託に関して撤回不能な選択をしなければならない。
QDOTに移行される財産は配偶者控除の対象になります。米国の連邦遺産税と贈与税法下では夫婦の一方から他方への財産の移転は法枠内であれば、原則として非課税です。ということは、死者の財産に対する遺産税は生存配偶者の死まで繰延措置されることになる。しかし、この信託内に残された分に対しての遺産税ですから、これは当然の話ですが、生存配偶者が移転された財産を消費してしまえば、繰延措置された税はゼロとなる。またlifetime gift exemptionを利用して、毎年、生存中に、無税で贈与していくことも出来る。2016年では無税額は一人につき$14,000であり、2017年もこの枠以内であれば贈与は無税である。夫婦であれば、合計$28,000であり、何人にも贈与できます。子供が3人であれば、一人に対して、夫婦で$28,000となります。
さて、もし生存配偶者が米国を本居とする意思がないと決した場合、QDOTを放棄し、遺産税を支払うことになります。生存配偶者はこの時点で遺産税支払い後の遺産を自分のものとし、米国を離れることにより、米国に所在がない資産に対する米国の所得税並び移転税を避けることが出来ます。一方、それとは反対に、引き続き、米国を本居とするのであれば、QDOTにある遺産は生存配偶者の死をもって米国の資産移転税を支払うことになります。言い換えれば、自分自身の死まで遺贈者である被相続人の資産移転税の(遺産税の)支払いを引き延ばせることになります。では、生存配偶者が米国市民となった場合、QDOTからの遺産分配は無税であり、居住者ではあるがまだ市民にならない間の期間、無税ではあるが、もし資産移転税が課せられたとしても、分配された資産を課税贈与とみなして、26US codeのセクション2010にある遺産税の単一税控除(Unified tax credit)を適用させ、基本控除額である$5,000,000を活用できる。
それでは次に、長い米国での生活を後に、日本に帰国を決意した場合を考えてみます。自己の意思により米国籍を離脱することを米語でExpatriationと呼び、それに該当する人をExpatriateと呼びます。これらは内国歳入庁法典の26US Codeセクションの877や2107にありますので、その概略を説明します。あくまでも、おおざっぱに説明しますので、これがすべてとは解釈しないでください。セクションの877は米国の市民権またはグリンカード保持者のような居住権を持っていた人が米国籍や居住権を離脱した場合に該当するセクションで、その人の税金がセクション871下で非居住者に適応される課税額を超過している場合、最後の税申告を終えた年から10年間の期間、今まで同様の米国市民として課税されると規定しています。
それでは、2008年の6月以降離脱した場合の新しいセクション871A下での非居住者課税条件とは:(1)市民権又は永住権を離脱した時からさかのぼって過去5年間の年平均所得税額が$160,000(2015年)であり、(2)純資産額が$2,000,000以上です。(3)また同時に、この金額に満たない場合でも、必要とされている書類(フォームの8854)や証拠の提出を満たさなかった場合とか、過去5年間の期間に税法上の規約を満たさなかった者にも該当します。ということは、5年間以上米国に居住していているが、正式な居住者になっていない外国人は遺贈税の対象となる。セクション2107はセクション871下で課税対象となる非居住者が上記した10年間の期間で死亡した場合、そのような非居住者に対する遺産税の条項を取決めています。以上の規約は1966年のThe foreign investors tax act of 1966, 略してFITAが非居住者の連邦所得税法の一部の変更をし、連邦相続と贈与税を低くしました。そのため、一部の米国市民が米国市民権を破棄し、外国に移住する傾向が生まれました。そのために、米国議会が米国離脱の10年間内における贈与また死去した離脱者の所得、遺贈、贈与の税法に関する条項を採用した。従って、この条項は米国籍離脱の目的が所得、遺贈税の回避を目的とするものに対しての条項です。米国籍を離脱した人の総遺産の中に含まれる資産は死亡時に米国内に存在する資産、特に不動産ですが、注意すべきは外国法人の株式の保有です。その外国法人の総議決権株式の全体の10%以上を直接または間接的に保有していて、且つ、その法人の全株式の総合価値の50%以上を保有しているかまたは直接的、または間接的または実質的に全議決権株式の総合議決力の50%以上を保有している場合、そのような外国株式は死亡時の遺産に含まれることとなる。(ここでいう50%とは全資産とその中に含まれる法人保有の米国所在資産の市場価値の比率から計算します。)
以上、大変長くなりかつ煩雑になりましたが、この議題自体が煩雑ので、お許しください。
日本の相続税の概略
以下、日本の相続の概略を知りたいとの要望がありましたので、下記します。
日本の相続税の申告書の作成を大別しますと、課税価格の計算、各人の算出税額の計算、各人の納付・還付税額の計算の三つの計算に大別できます。
(1)課税価格の計算
まず一番目の課税価格の計算とは取得財産の価額から債務や葬式代の金額を差し引き、純資産価額を算出しますが、この金額が赤字の場合はそれをゼロと表示します。ここで、算出された純資産価額を1000円未満を切り捨てて、それを課税価額と呼びます。方程式で表すと:(相続または遺贈により取得したとみなされる財産)マイナス(非課税財産)マイナス(債務控除つまり債務・葬式費用)プラス(生前贈与財産の加算)=(課税価格)と表現されます。非課税財産の身近な例といえば故人の生命保険です。これには非課税限度額があり、500万円x法定相続人の数が限度額です。下記の例は相続人が4人ですからその金額は500まんx4=2千万円となります。この金額までは税金がかからないということです。相続人が2人であれば2x500万円=1000万円までが非課税です。(2017年4月30日現在の税法)。
(2)各人の算出税額の計算
遺産に係る基礎控除額、相続税の税額、各人への税額のあん分の割合からの算出税額、以上の計算をします。方程式で表しますと、(1で算出された課税価格の合計額)マイナス(遺産に係る基礎控除額)=(課税遺産額)x(各人の法定相続分)=(各取得金額)x(累進税率)=(総額の基となる税額)となり、以上を相続人別に算出し、各人の(総額の基となる税額)を算出し、それを全部足した額を=(相続税の総額)と呼びます。つまり下記の例題では(配偶者の総額の基となる税額)プラス(太郎の総額の基となる税額)プラス(姉の総額の基となる税額)プラス(妹の総額の基となる税額)=(相続税の総額)。
(3)各人別の納付・還付税額の計算
日本の法の17条に従い、算出された(相続税の総額)を各相続人えのあん分割合に従い、各人の算出相続税額を計算し、それらを加算し、そこから法19条の贈与税額控除を差し引き、配偶者の場合は(配偶者に対する相続税額の軽減)を差し引き、次に未成年者控除、障碍者控除、相次相続控除、外国税額控除を経て、納付相続税額にたどり着きます。方程式にします:(相続税の総額)x(あん分割合)=各人の(算出相続税額)+++=(相続税額の加算)マイナス(贈与税額控除)マイナス(配偶者に対する相続税額の軽減)マイナス(未成年者控除)マイナス(障碍者控除)マイナス(相次相続控除)マイナス(外国税額控除)=(納付相続税額)。以上各相続人別に計算します。方程式の例は配偶者を例にとりましたが、その他の相続人はその部分を外して計算してください。
以上が概略です。例題を作って見ました。
例題:
父、母、姉、弟(太郎)、妹の五人家族を想定します。いずれも成人です。相続人は4人となります。太郎君は日本国籍の米国のグリン―カード保持者で、米国居住者。その他の人は皆、日本国籍の日本居住者です。父が死亡したと想定します。父を、以下、被相続人と呼びます。遺産は家、貯金であり、負債はないと想定します。生命保険金は1800万円であり、取得財産の総額を1億円とします。生命保険の課税計算をします。
保険金の非課税限度額:500万円x4人=20,000,000.従って、生命保険金は1800万円ですから、全額、非課税となります。
一億円の配分を配偶者の取得財産を7千万とし、その他の各人、1千万づつとします。
被相続人 配偶者 姉 太郎 妹
取得財産の価額: 100,000,000 70,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000
債務及び葬式費用 1,000,000 1,000,000
課税価額 99,000,000 69,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000
まず、遺産と贈与関係に関する法令は:(SUBTITLE B-ESTATE AND GIFT TAXESとあり、そのsubtitle BのCHAPTER 11がESTATE TAX,遺産関係であり、CHAPTER 12が贈与税に関する法令です。)そのChapter11の内のSub-chapter Aの中のセクション2001の(a)によれば、非居住者が米国の居住者となった時点で、その人の全世界の収入は米国での課税対象となります。同時に、米国における遺産並びに贈与税も関係してきます。ここで注意しなければならないことは非居住者が永住権をもって、居住者になった場合と、単に税法上、非居住者が居住者と見なされて、居住者扱いになるのとでは税法がかなり異なることに留意するべきです。また、所得税法上での居住者の定義と遺産並びに贈与税法上での定義とは異なります。遺産並びに贈与税法は所得税ではなく、資産移転税(transfer tax)下にあるからです。留意しなければならない点は米国では被相続人が課税されます。通常のケースでは、税を支払うのは被相続人であり、相続人ではありません。日本の場合は、遺産課税方式ではなく、遺産取得課税方式を採用し、相続税は被相続人からの財産の取得に対して課税されるのです。取得者が税を払います。留意が必要です。また、遺産並びに贈与税法下では米国居住者の定義が所得税法下とは些か異なります。重複するヵ所も、場合も、あります。セクション2001(a)は米国市民並びに米国居住者である被相続人の課税対象にあたる遺産の移転は課税されると定義しています。Regulation と呼ぶ行政規則のReg.Sec.20.0-1(b)によれば、 2001(a)の対象となる米国居住者、resident (居住者)とはその人が死亡した時に米国にdomicile(ドミサイル)があった人としている。ドミサイルとは日本語で本居地、すなわち、人が固定的な生活の本居を持っている場所であり、且つ、そこを離れても、またそこに戻る意思(intent)を持っている場所であります。米国は合衆国でありますから、現在の各州は独立した国家であった時期もある関係から,residence,domicileの関係が税法上、大変複雑です。(ここら辺の雰囲気は、このウエブの小生の”米国税法の歴史”と題する小論文をご参考にして下さい。)
以下、読みやすくするために、米国税法令へのレファレンスをなるべく省略して書きますが、いずれも、本文はRegulation(規則)の各section(法律の条とか節)をもとに書いています。さて、その人が死亡したときに、米国にドミサイルがあったとすると、不動産、人的財産、有形財産、無形資産、それらが地球上のどこにあろうと、その死者の総遺産に、その全価値は含まれなければなりません。では、死者が非居住者であり且つ米国市民でない場合で、米国で死亡したとなる場合はどうなるかといえば、米国で報告すべき総遺産はその死者の米国に存在する財産です。最近はやっている、日本人のハワイの別荘所有、日本人のハワイにあるコンドはその人がハワイで亡くなった場合、その死者の米国における総遺産の中に含まれることになります。ただし、日本国は米国と遺産税の租税条約を提携していますから、この条約に従って、租税義務を進めることになります。ここでは詳細しませんが、日本の相続法に国外財産の5年ルールと呼ばれる法令があります。このルールも影響してきます。ここでは説明しません。
さて、このドミサイルという言葉ですが、日本語訳の”本居”と翻訳したところで、意味を成すものではありません、従って、ここで、米国の税法用語上でのドミサイル、domicileとそれに絡んでくる”居住地”residenceの意味と、前にも書きましたように、それらの相続税法上での意味と所得税法との差異を書きます。
DOMICILE
Domicil(e),この単語、語尾にeがあっても、なくても正しいスペルです。ポピュラーなのはeがついたほうです。さて、DomicileとResidenceは同意語ではありません。英語ですから、英語でまずresidenceとdomicileの違いを説明します、この方がわかりやすいかもしれません。Residence comprehends no more than a fixed abode where one actually lives for the time being. It is distinguished from domicile in that domicile is the place where a person intends eventually to return and remain.これが、判例などに出てくる表現ですが、さらに、Restatement of Conflict of Lawsのsection 9によれば、More specifically, domicile means "the place with which a person has a settled connection for certain legal purposes, either because his home is there, or because that place is assigned to him by the law."とあります。 これは英語ですから、英国ではdomicileをどう表現し、英国と米国では相違はあるのかと調べてみると、英国ではdomicile means " the country that a person treats as a permanent home and to which he or she had the closest legal attachment." 米国でも英国でも、そこにはその人のintentの存在が,いやintent(ion)の存在があることがわかります。そうすると我々日本人はここでintentとintentionの意味を考えてみる必要があると考えます。それでは、intent とintentionの意味はといえば、ある有名な法律家の意見によれば、”intention cannot be satisfactorily defined and does not need a definition, since everyone knows what it means"ともいわれ、またintentとintentionでは内包的な違いがあります。例えば、”one has evil intent, but good intentions." Intentionにはある概念に含まれる属性を言外に”ほのめかす”とでも言いましょうか、connotative(共示的な、内包的な)な意味があるのですです。それでは、intentとは何ぞやということになりますが、
ここではintent とはthe state of mind accompanying an act.ということです、行動を伴なう心の状態。この心の状態に従って”決意”を表している色々な行動の証拠がdomicile とresidenceの違いを決めます。以上を念頭に置きながら、以下をお読みください。
米国連邦所得税上の米国resident(居住者)の意味。
居住者であるかどうかを分析することの大切さは、その人が住んでいるところが単に〝居所”(residence)ではなく、そこを離れても帰来する意志(intent)を持っている”本居”(domicile)となる場所でもあるかもしれないことにあります。内国歳入法典のセクション7701(b)に税法上の居住者と非居住者の定義があります。居住者であるには以下の3項目を満たしているかどうかです:
1.the green card test(グリーンカード、永住許可証)
2. the substantial presence test(実質的存在)
3. the first year election test(初年度選択)
ただし、租税条約上の条文がこれを覆す場合があることに留意してください。
グリーン・カード テスト
これは外国人登録証明書を取得した人で、年間を通じて、米国に居住しているとみなされます。A Lawfully permanent residentですと、この人は米国の移民法に基づき、移民として米国に永久に居住する、法的に許可された特権を持っている人です。言い換えれば、グリーン・カードを保持しているということになります。これは居住のステイタスということになり、このステイタスは無効になるとか、管理上または法律上、放棄されたとみなされない限りにおいて、継続されます。グリーン・カード保持者の居住が始まる年の最初の日にちは、下記に述べる、2のthe substantial presence testを満たしていない場合、永住権保持者として、米国にいる最初の日ということになります。なぜこのようなことを書いたかといえば、移民関係の書類に”最初の日”と題する項目がよくあるからです。
2.The substantial presence test
内国歳入庁法典のセクション7701(b)の中心ともなる議題です。このテストを満たすには、まず本年、米国に少なくとも31日滞在している、そして本年の最後の日、12月31日からさかのぼって3年間の間に、加重平均で計算して、少なくとも183日に米国に滞在している。加重平均の計算方法は、まず、本年の滞在日数に1を掛ける。前年の滞在日数に3分の1を掛ける、その前の年の滞在日数に6分の1を掛ける。数式で説明しますと、例: 2016年の滞在日数を120日、2015年の滞在日数を120日、2014年の滞在日数を120日、とします、
120x1+120x1/3+120x1/6=180日となります。これでは条件を満足していません。それでは、各年の滞在日数を122日とすると、122x1+122x1/3+122x1/6=183日となり、米国居住者としての条件を満たします。3年間続けて、最低122日滞在していれば、183日の条件は満足できるということになります。それでは、183日は絶対条件かというと、そうではなく、例外があります。本年度の滞在日数が183日以下で、外国が米国よりもっと密接な関係にある人の場合は米国居住者としての条件を満たしません。ただし、上記の計算方式以外の方法で、米国居住権を得た場合は、この例外は該当しません。また、病気などの理由のため、米国を離れることが出来なかったために、米国滞在日数が計算方程式の183日を満たしたとしても、実質的存在とは認められません。
実質的存在を満たしたされる最初の日は183日計算方程式を満たした瞬間の日です。実質的存在テストが誰にでも適応されるかというと、そうではなく、このテストから免除されているのは、外国政府関係者、学校の先生、学生 または慈善団体主催のスポーツ・イベントで米国に来ている運動の選手などです。外国政府関係者とは外交官、国連などの国際団体関係者・大使館職員・領事館職員のビサ入国者とその家族を指します。学校の先生、学生とは移民法下で米国に一時的に滞在している個人で、この部門の移民法の条件を満たしている者です。カナダとかメキシコから米国に仕事のために通勤している者は米国滞在とは認められません。旅行者などで、米国を通過する時間が24時間以内の場合は滞在とはなりません。
3.The first-year election test (初年度選択テスト)
米国の”居住者である”と選択することも出来ます。それには、ある条件を満たさなければなりません。条件の第一はグリーン・カード・テストには合格できない、並びに、居住を選択する年又はその前年もsubstantial present test(183日テスト)を満たすことは出来ない、しかしながら、”居住者である”ことを選択した、そして、その選択の翌年には183日テストを満たすことが出来る、これが第一条件です。次に、居住選択年に少なくとも31日間、米国に滞在し、且つ又、このテスト期間中、少なくとも、その期間日数の75%は米国に滞在していなければない。このテスト期間が始まる日(数え始める日)は”31日”期間を数え始める日からで、その日から居住選択年の12月31日までをテスト期間の最後の日とする。75%テストを適用するにあたり、実際に米国に滞在していない期間の最高5日間までは米国に滞在しているとして処理されます。初年度選択テストを選んだとすると、居住者扱いとなるのは、31日テストと75%テストの両方を満足させる一番最初の米国滞在期間が始まる最初の日からです。初年度選択をした年の税申告書に選択を表示します。初年度選択後に続く183日テストを満足させた後でないと、選択は許可されません。一度、選択を選びますと、これを無効にするには、内国歳入庁の許可が必要となります。
租税条約
日米間の租税条約上の規定または条項は上記した内国歳入法典、つまり、連邦政府の全ての内国税を規定する法典を乗り越える場合があります。租税条約上、内国歳入法典下で、居住者扱いとなるにもかかわらず、租税条約上、非居住者扱いとなることもあります。従って、その人の国籍上での、その国の中での税法上での地位を明確にしたうえで、租税条約上を照らし合わせながら、居住の地位を決めるべきです。それでは両国が法律上、どちらの国もその人を居住者としているとします。そのような場合のために、租税条約にはタイブレイカーという条項が用意されています、日米間には”所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約”があり、その第四条に”一方の締約国の居住者”が定義されています。簡単に書けば、その国の居住者とはその国に、パーマネントな、永続的な家庭を、家を持っていることです。ですから、これを実証する決め手を数々上げていくことにより、居住を判断することになります。では、両国にパーマネントな家を持っている人はどうなるのでしょう?その様な場合は、その人の経済活動の本拠地、つまり、生活のためのお金はどこから得ているのかという、人間の生きる手段を得る場所が決め手となります。では、どちらからも50%づつ得ている人はどうなるのでしょうか?決めてはその人の生活習慣はどちらの国にあるかが決め手になります。では、生活習慣はどちらにもある、いや、どちらにもないとする場合、どうなるかといえば、ここではその人の国籍が決め手として浮上します。では、2重国籍の人はどうなります?この場合は両国の政府の責任者間の話し合いということになります。ですから、内国歳入法典上、つまり所得税法上、自動的に米国居住者とみなされるグリンカード保持者であっても、租税条約上、居住者とは限らないのです。上記したように、米国における時間など、そして租税条約上のタイブレイカー条項も考慮しなければなりません。
それでは居住ではなく本居(ドミサイル)とは何かを考えてみます。
しかし、ここで,英語のresidenceとdomicileが日米の条約上、日本語でどう表現してあるのかのを確かめます。米国側の租税条約の”article 4, section 1.”,日本側の日本語でいう”第4条 の1.”の最初の部分を下記します:
Article 4
1. For the purpose of this convention, the term "residence of a contracting State" means any person who, under the law of that contracting State, is liable to tax therein by reason of his docile, residence, citizenship, place if head or main office, place if incorporation, or any other criterion of a similar nature, and also includes:等々と続きますが、
この部分の日本語での対訳は以下の通りです:
第4条
"1.この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、市民権、本店又は主たる事務所の所在地、法人の設立場所その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税をうけるべきものとされる者をいい、次のものを含む。":とあります。従って、以下、"residence"を”住所”とし、"domicile"を”居所”と表現しますが、この”居所”なる表現は、我々、一般人には、どうも、”本居”と表現した方がわかりやすく感じられますので、本文中、ドミサイルなる英語を”本居”と表現いたします。
ドミサイルの定義
米国のドミサイル、”本居”という言葉の意味するところを書いてみます。 内国歳入法典の補填説明をする指導原則であるregulationのsection 20.0-01(b)”と25.2501-1(b)が説明する”domicile", ”本居=居所”の解釈を翻訳すると、”現在住んでいるところから将来、確実に移転するという、現時点での移転意図はない心の状態で、その場所に、わずかな期間でも住むことにより、人は本居を得る。そこに無期限に居残るという必須な意図のない居所は本居(ドミサイル)を構成するには充分ではないし, 同時に、単に本居を変えるという意図があるだけでは、実際に本居を変えることにはならない。意図と同時にそこから移動することが本拠を変えることになる。参考のために、以下が本文の抜粋です。
(b) Scope of regulations—(1) Estates ofcitizens or residents. Subchapter A of Chapter 11 of the Code pertains to the
taxation of the estate of a person who was a citizen or a resident of the United States at the time of his death.
A ‘‘resident’’ decedent is a decedent who, at the time of his death, had hisdomicile in the United States. The term ‘‘United States’’, as used in the estate tax regulations, includes only
the States and the District of Columbia. The term also includes the Territories of Alaska and Hawaii prior to their admission as States. See section 7701(a)(9). A person acquires a domicile in a place by living there, for even a
brief period of time, with no definite present intention of later removing therefrom. Residence without the requisite
intention to remain indefinitely will not suffice to constitute domicile, nor will intention to change domicile
effect such a change unless accompanied by actual removal. For the meaning of the term ‘‘citizen of the
United States’’ as applied in a case where the decedent was a resident of a possession of the United States, see
§ 20.2208–1. The regulations pursuant tosubchapter A are set forth in §§ 20.2001–1 to 20.2056(d)–1.
以上の文章の主要なポイントを英語で、要約すれば、
*simply the intention to change domicile is not going to actually change your domicile. Intention and then moving away changes your domicile.
さらに、わかりやすく、それらを方程式化すれば以下のごとくになる:
(residence) +( intent to stay indefinitely) = domicile
(住所)+(無期限にそこに住む意志)=本居
(removal) +( intent to change) = changing domicile
(移る)+ (変えるという意図)=本居を変える。
ということは、規定によれば、米国においては、人はある場所に住んではいるが、そこは住所であり、本居は他にあるということもあるということですし、住んでいるところが本居であり、住所ではないという場合も出てきます。以上、所得税法ですが、移転税法下(遺贈などの場合)では、もしその人に米国に居住する意図がないのであれば、”米国に住んでいる非居住者”とみなされます。このような場合、事実関係が決め手となります。それでは、最高裁での本居の定義はどうであるかといえば、”そこに制限のない期間、とどまっているという意図の明白なそして信じるに足る証拠が付随しているある特定の場所にある居所が本居である。”と決しています。 それではそのような証拠とは何かといえば、毎年住んでいる住居の存在、選挙の投票権、税金の申告場所、不動産権の所有、運転免許書、車の登録証書、婚姻関係、雇用関係等々となります。
以上、所得税下と租税条約下ににおけるドミサイルと住所、domicile とresidenceを説明しましたが、今度は遺産、相続及び贈与に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約下におけるドミサイルと住所の問題を考察してみます。昨今、かなりの日本人がハワイなどに住居を購入しております。そんな時、ある日突然、死亡した場合、国際的な遺産、相続、贈与などの問題は浮上してきます。
この日米間の条約の第三条の1を下記します:
(1)被相続人がその死亡の時に若しくは贈与者がその贈与の時に合衆国の国籍を有し若しくは合衆国内に住所を有していた場合、または被相続人の遺産の受益者がその被相続人の死亡の時に若しくは贈与の受益者がその贈与の時に日本国内に住所を有していた場合は、これらの時における次に掲げる財産又は財産権の所有地は、租税の賦課及び第五条によって認められる税額控除については、もっぱら次に定めるところに従って決定されるものとする。
(注:米国側の文章と対比してみますと、ここで上記中の”住所と有して”とある"住所"の英語はdomicileであり、residence でないことに留意ありたい。)
(a)不動産または不動産に関する権利はその不動産に係る土地の所在地。
(b)有体動産(通貨及び発行地で法貨として認められているすべての種類の貨幣を含み、本条において他に特別の規定がある債権を除く。)はそれが現実にある場所にあるものとし、運送中のである場合には、目的地にあるものとする。
(c)債権(債券、約束手形、為替手形、銀行預金及び保険証券を含み、債券その他の流通証券で持参人払式のもの及び本条において他に特別の規定がある債権を除く。)は、債務者が居住(resides)する場所にあるものとする。
(d)-(k)その他、のれん、著作権、漁業権、特許権とかいろいろありますが、ここでは省略いたします。
以下、参考のために、第三条の1の米国側の文章を書きます,
無論、当然同じものですが、使われている主要な単語の翻訳がわかります;
ARTICLE III
(1) If a decedent at the time of his death or a donor at the time of the gift was a national of or domiciled in the United States, or if a beneficiary of a decedent's estate at the time of such decedent's death or a beneficiary of a gift at the time of the gift was domiciled in Japan, the situs at the time of the transfer of any of the following property or property rights shall, for the purpose of the imposition of the tax and for the purpose of the credit authorized by Article V, be determined exclusively in accordance with the following rules:(a) to (k).ということになります。
以上のように、不動産の場合、その人が死亡時に米国にドミサイルがあると判断されれば、その土地の所在地が決め手となる。債券であれば、債務者が居住する場所にあるもとする。
それでは非居住者でありながら、米国での死亡時に、本居が米国にあるとされる場合の人の所有している米国に帰属する資産の遺贈はどうなるかといえば、米国の相続法に従うとされる。ここでもドミサイル、本居がどこにあるかということが、非居住者であるよりも優先される。米国に帰属する資産とは米国に所在する不動産や有体動産、米国法人の債券、米国政府や米国人の債務です。また、ここでいう所有とは、死亡時から数えて3年前における間の資産の移行は死者の遺産に加えられる。遺産に加えられない資産は米国外にある不動産や有体動産、米国での取引または商売から生み出されたお金のの米国預金以外の米国にある預金(米国内外を問わない。)、外国証券、債務、並びに債務者が米国人であっても、内国歳入法典の1441から1443の第3条に該当しない”ポートフォリオ・金利、米国居住の非居住者外国人の生命保険からの入金、米国に展示に貸し出されている美術品、などです。米国居住の非居住者外国人の遺産・相続税控除額は$13,000ですが、これは税控除額ですから、遺産の額の$60,000に相当します。グリーンカード保持者のような永住権を持っている人の遺産の控除額は2016年では$5,450,000ですから、大差があります。しかし、米国に居住している非居住者外国人が米国で死亡した場合、葬式代は控除になりますし、米国の総遺産に対する借金にあたる額は控除になりますし、米国の慈善事業団体への寄付金、生存配偶者が米国市民である場合、配偶者控除があります。これは連邦遺産・贈与税制下では、夫婦の一方から他方への財産の移転は枠以内であれば、原則として非課税であり、この原則が非居住者配偶者から米国市民の生存配偶者にも適応されます。
総遺産額 xxxx
控除:
経費、債務、税金 xx
損失 xx
公益遺贈 xx
配偶者控除 xx xxx
課税遺産額 xxx
加算:1976年以前の課税贈与額 xx
課税基準額 xxxx
基準額に対する暫定税額 xxx
控除:
支払い済み贈与税額 xx
その他の税控除額 xx xxx
支払い税額 xxx
以上が通常の場合の連邦遺産税の計算の方程式です。
さて、それでは非居住者外国人がドミサイルを、租税条約の文章の中で表現されている”住所”を米国と選択する前に、またはそうなる前に、遺産相続の観点から自己の資産を検討して、遺産税に対するプラニングしてみる必要があります。米国では前にも書きましたように遺産税は所得税ではなく、遺産移転税です。資産を移転する権利に対する課税であります。この税金は相続する人が支払うのではなく、被相続人がその資産を移転することに課税が起きるのです。前記しましたように、米国に住んでいる非居住者は米国に存在する不動産と有体動産の贈与に対してのみ課税されます。それ以外の資産の贈与に対しては課税されません。例えば、米国株券、ミューチュアルファンド株券、債務証書、などは贈与課税対象外です。そうすると、不動産と有体動産をドミサイルを米国に移す前に贈与してしまうか、売却し、そのお金を贈与してしまえば、贈与税を避けることが出来ますが、もし贈与先が米国人又は米国永住者であった場合、そしてその金額が$100,000を超えている場合、贈与を受けた人はフォーム3520にてその旨を報告する必要があります。
フォーム3520、Annual return to report transactions with foreign trusts and receipts of certain foreign giftsがこの報告書の名前です。ここで遺産関係の信託に関して、少々、説明いたします。
Qualified Domestic Trust 略して,(QDOT)
この信託は生存した配偶者が外国人であった場合、遺産や贈与を移転し、遺産額や贈与額の課税額を算定する場合、無制限の金額の配偶者控除が出来る制定法上の信託です。この信託の呼び名は、通常、”QDOT”と略して使われます。発音は”キュー ドット”です。信託がQDOT型の信託であるためには以下の4条件を満たさなければなりません。
1.財務省規則に例がとして乗せられている事項を除いて、この信託は少なくとも受託者の一人は米国市民または米国法人でなければならない。
2.信託証書は信託財産の本体の分配にかかる遺産税の源泉徴収をする義務は米国人受託者にあることを定めていなければならない。
3.この信託は信託に課せられるすべての遺産税の徴収を確保することを公表している規則に従っていなければならない。
4.遺贈者の遺言執行者はこの信託に関して撤回不能な選択をしなければならない。
QDOTに移行される財産は配偶者控除の対象になります。米国の連邦遺産税と贈与税法下では夫婦の一方から他方への財産の移転は法枠内であれば、原則として非課税です。ということは、死者の財産に対する遺産税は生存配偶者の死まで繰延措置されることになる。しかし、この信託内に残された分に対しての遺産税ですから、これは当然の話ですが、生存配偶者が移転された財産を消費してしまえば、繰延措置された税はゼロとなる。またlifetime gift exemptionを利用して、毎年、生存中に、無税で贈与していくことも出来る。2016年では無税額は一人につき$14,000であり、2017年もこの枠以内であれば贈与は無税である。夫婦であれば、合計$28,000であり、何人にも贈与できます。子供が3人であれば、一人に対して、夫婦で$28,000となります。
さて、もし生存配偶者が米国を本居とする意思がないと決した場合、QDOTを放棄し、遺産税を支払うことになります。生存配偶者はこの時点で遺産税支払い後の遺産を自分のものとし、米国を離れることにより、米国に所在がない資産に対する米国の所得税並び移転税を避けることが出来ます。一方、それとは反対に、引き続き、米国を本居とするのであれば、QDOTにある遺産は生存配偶者の死をもって米国の資産移転税を支払うことになります。言い換えれば、自分自身の死まで遺贈者である被相続人の資産移転税の(遺産税の)支払いを引き延ばせることになります。では、生存配偶者が米国市民となった場合、QDOTからの遺産分配は無税であり、居住者ではあるがまだ市民にならない間の期間、無税ではあるが、もし資産移転税が課せられたとしても、分配された資産を課税贈与とみなして、26US codeのセクション2010にある遺産税の単一税控除(Unified tax credit)を適用させ、基本控除額である$5,000,000を活用できる。
それでは次に、長い米国での生活を後に、日本に帰国を決意した場合を考えてみます。自己の意思により米国籍を離脱することを米語でExpatriationと呼び、それに該当する人をExpatriateと呼びます。これらは内国歳入庁法典の26US Codeセクションの877や2107にありますので、その概略を説明します。あくまでも、おおざっぱに説明しますので、これがすべてとは解釈しないでください。セクションの877は米国の市民権またはグリンカード保持者のような居住権を持っていた人が米国籍や居住権を離脱した場合に該当するセクションで、その人の税金がセクション871下で非居住者に適応される課税額を超過している場合、最後の税申告を終えた年から10年間の期間、今まで同様の米国市民として課税されると規定しています。
それでは、2008年の6月以降離脱した場合の新しいセクション871A下での非居住者課税条件とは:(1)市民権又は永住権を離脱した時からさかのぼって過去5年間の年平均所得税額が$160,000(2015年)であり、(2)純資産額が$2,000,000以上です。(3)また同時に、この金額に満たない場合でも、必要とされている書類(フォームの8854)や証拠の提出を満たさなかった場合とか、過去5年間の期間に税法上の規約を満たさなかった者にも該当します。ということは、5年間以上米国に居住していているが、正式な居住者になっていない外国人は遺贈税の対象となる。セクション2107はセクション871下で課税対象となる非居住者が上記した10年間の期間で死亡した場合、そのような非居住者に対する遺産税の条項を取決めています。以上の規約は1966年のThe foreign investors tax act of 1966, 略してFITAが非居住者の連邦所得税法の一部の変更をし、連邦相続と贈与税を低くしました。そのため、一部の米国市民が米国市民権を破棄し、外国に移住する傾向が生まれました。そのために、米国議会が米国離脱の10年間内における贈与また死去した離脱者の所得、遺贈、贈与の税法に関する条項を採用した。従って、この条項は米国籍離脱の目的が所得、遺贈税の回避を目的とするものに対しての条項です。米国籍を離脱した人の総遺産の中に含まれる資産は死亡時に米国内に存在する資産、特に不動産ですが、注意すべきは外国法人の株式の保有です。その外国法人の総議決権株式の全体の10%以上を直接または間接的に保有していて、且つ、その法人の全株式の総合価値の50%以上を保有しているかまたは直接的、または間接的または実質的に全議決権株式の総合議決力の50%以上を保有している場合、そのような外国株式は死亡時の遺産に含まれることとなる。(ここでいう50%とは全資産とその中に含まれる法人保有の米国所在資産の市場価値の比率から計算します。)
以上、大変長くなりかつ煩雑になりましたが、この議題自体が煩雑ので、お許しください。
日本の相続税の概略
以下、日本の相続の概略を知りたいとの要望がありましたので、下記します。
日本の相続税の申告書の作成を大別しますと、課税価格の計算、各人の算出税額の計算、各人の納付・還付税額の計算の三つの計算に大別できます。
(1)課税価格の計算
まず一番目の課税価格の計算とは取得財産の価額から債務や葬式代の金額を差し引き、純資産価額を算出しますが、この金額が赤字の場合はそれをゼロと表示します。ここで、算出された純資産価額を1000円未満を切り捨てて、それを課税価額と呼びます。方程式で表すと:(相続または遺贈により取得したとみなされる財産)マイナス(非課税財産)マイナス(債務控除つまり債務・葬式費用)プラス(生前贈与財産の加算)=(課税価格)と表現されます。非課税財産の身近な例といえば故人の生命保険です。これには非課税限度額があり、500万円x法定相続人の数が限度額です。下記の例は相続人が4人ですからその金額は500まんx4=2千万円となります。この金額までは税金がかからないということです。相続人が2人であれば2x500万円=1000万円までが非課税です。(2017年4月30日現在の税法)。
(2)各人の算出税額の計算
遺産に係る基礎控除額、相続税の税額、各人への税額のあん分の割合からの算出税額、以上の計算をします。方程式で表しますと、(1で算出された課税価格の合計額)マイナス(遺産に係る基礎控除額)=(課税遺産額)x(各人の法定相続分)=(各取得金額)x(累進税率)=(総額の基となる税額)となり、以上を相続人別に算出し、各人の(総額の基となる税額)を算出し、それを全部足した額を=(相続税の総額)と呼びます。つまり下記の例題では(配偶者の総額の基となる税額)プラス(太郎の総額の基となる税額)プラス(姉の総額の基となる税額)プラス(妹の総額の基となる税額)=(相続税の総額)。
(3)各人別の納付・還付税額の計算
日本の法の17条に従い、算出された(相続税の総額)を各相続人えのあん分割合に従い、各人の算出相続税額を計算し、それらを加算し、そこから法19条の贈与税額控除を差し引き、配偶者の場合は(配偶者に対する相続税額の軽減)を差し引き、次に未成年者控除、障碍者控除、相次相続控除、外国税額控除を経て、納付相続税額にたどり着きます。方程式にします:(相続税の総額)x(あん分割合)=各人の(算出相続税額)+++=(相続税額の加算)マイナス(贈与税額控除)マイナス(配偶者に対する相続税額の軽減)マイナス(未成年者控除)マイナス(障碍者控除)マイナス(相次相続控除)マイナス(外国税額控除)=(納付相続税額)。以上各相続人別に計算します。方程式の例は配偶者を例にとりましたが、その他の相続人はその部分を外して計算してください。
以上が概略です。例題を作って見ました。
例題:
父、母、姉、弟(太郎)、妹の五人家族を想定します。いずれも成人です。相続人は4人となります。太郎君は日本国籍の米国のグリン―カード保持者で、米国居住者。その他の人は皆、日本国籍の日本居住者です。父が死亡したと想定します。父を、以下、被相続人と呼びます。遺産は家、貯金であり、負債はないと想定します。生命保険金は1800万円であり、取得財産の総額を1億円とします。生命保険の課税計算をします。
保険金の非課税限度額:500万円x4人=20,000,000.従って、生命保険金は1800万円ですから、全額、非課税となります。
一億円の配分を配偶者の取得財産を7千万とし、その他の各人、1千万づつとします。
被相続人 配偶者 姉 太郎 妹
取得財産の価額: 100,000,000 70,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000
債務及び葬式費用 1,000,000 1,000,000
課税価額 99,000,000 69,000,000 10,000,000 10,000,000 10,000,000
太郎さんへの税引き後の相続額は米国では非課税となります。また,もし被相続人が米国籍であった場合、太郎さんは 563,131 を税控除を米国で受けることが出来ます。以上です。ご参考にして下さい。
上田 稔 著 Certified Public Accountant
上田 稔 著 Certified Public Accountant