外国金融口座報告書、FBARの解説、フォームTDF-90-22-1
FBAR Report of Foreign Bank and Financial Accounts
外国銀行並びに外国金融口座の報告義務
上田 稔 CPA, CGMA
Bank Secrecy Act,銀行秘密法、略称 BSAによれば、米国人(US Person)と総称される米国居住者を含む者が米国外の銀行やその他の金融機関に$10,000以上の金融資産を保有していたり、それに金銭的な利害関係を持っているとすると報告義務が生じる。この報告書はReport of Foreign Bank and Financial Accounts, 通称、FBARと呼ばれ、報告するフォームの名前がTD F 90-22.1です。FBARは税金の申告書ではありません。申告書の8923, FACTAではありません。FBARの報告先はFinCen(以下、フィンセン)と呼ばれる米国財務省の中の一部門の金融犯罪執行機関です。2004年以前、このフォームの報告義務は存在していたにもかかわらず、過失から報告をしないことがあって罰則はなかったに等しく、同時に報告のルールの管理が以前はフィンセンの管理下にあって、極めて限られた指導と監督指揮下にあった。これが、俄然、近年に入って、民事並びに刑事制裁を含む相当な罰金・制裁金を科すようになった。タイトル31下では、FBAR報告の故意の違反罰の刑罰は罰金$250,000、懲役5年又は両方です。金融犯罪執行機関と内国歳入庁が一体となって海外に置かれている金融資産を把握使用としている。ここに課税を逃れてきた多くの課税対象資産をあぶり出そうとしている。FBAR報告をすることにより、自主的に海外にある該当金融口座の報告を求めた。そして過去の未報告に対して、つまり過去の罪に対して自主的に名乗って出るようにOVDPというプログラムを打ち出した。2009年のことでした。OVDPとはOffshore Voluntary Disclosure Program, オフショアー自主開示プログラムの略で、今、進んで自白するのであれば罰金を軽減するという招待状であった。そして2011年、今度はOVDIと銘打って二度目の自白招待状を出した。OVDIとはOffshore Voluntary Disclosure Initiative オフショアー自主開示イニシアチブの略で、ここでは前回よりも多くの要求事項、例えば延滞されている全ての年の税金の申告書並びにFBAR報告書とこの期間の海外金融口座の最高額の25%に等しい罰金を科する等があった。OVDIはその年の9月9日に締め切られた。OVDPとOVDIが告示されたこの間、今までFBAR報告を無視してきた申告者・報告者達には複雑な心の葛藤があったと思う。自首すれば、多額の税金と金利と延滞金などの支払いを迫られるし、同時に全ての金融活動に対する監査が行われることになる。もし無視するには、どのような対策があるか?自首せずに、修正申告・報告をしてしまう。このような方法をQuiet Disclosure, “こっそり開示”、“しらばっくれ開示”と呼ぶ。“OVDP/OVDI、知りませんでした。過去の未報告は進んで修正申告・報告をしてあります”と修正申告を完了したことを既成事実化することにより罰金や監査をのがれようとする意図である。2011年5月19日、内国歳入庁とフィンセンはこのような手法に明白な答えを出した。*Schiavo Caseです。ここではこの判例の詳細を避けますがボストン銀行の役員のSchiavoが“こっそり開示”を2003年から2008年の間のHSBC銀行の外国金融口座の未報告・未申告することにより意図的にOVDP/OVDIを逃れようとした等の罪状で民事罰の制裁金$76,283(HSBC口座の最高額の50%)と懲役5年の刑と$250,000の刑事罰に直面している。 *(全米公認会計士税務月刊2012年5月号参照.)
FBAR報告をする場合、TDF90-22.1フォームの最新版を使用してください。最新版は2012年1月の日付のものです。過去の報告でそれを現段階で訂正する場合もこの最新のフォームを使用して下さい。過去のフォームを使用した場合、送り返されます。正しいフォームでの最報告が要求されます。日付はTDF90-22.1フォームの1ページ左上のこのフォーム名の下のカッコ内に明示してあります。現時点の最新の表示は(Rev. January 2012)です。
締め切り日が6月30日です。ここでも税務申告とは異なります。延期はありません。この書類の財務省への到着日が6月30日であり、郵便局投稿日ではありません。要注意です
普通便の投稿先はDepartment of the Treasury
P.O. Box 32621
Detroit, Michigan 48232-0621。
持参する場合は:米国大使館、必ず受領書を受け取ること。又はフォームの一ページ目のコピーを持参し、その上に受取日のはんこを押してもらうのも一つの方法です。
E-file
本年度は自主的ですが、予想としては来年からは強制されると思います。
http://bsaefiling.fincen.tres.gov
画面上にBSA E-filing Systemと表示があり、ここに書かれているインストラクションに従って所要とされる番号などをもらいますが,
www.basefiling.fincen.treas.gov/Enroll Indivisual.html
を開き、登録してください。BSAなる略語が使われますがFinCEN関係で使われる場合、その意味はBank Secrecy Act of 1970、つまり1970年の貨幣並びに外国取引報告法の略です。BSAは他の意味にも良く使われるので、要注意です。また税の申告の場合は申告日の延長などが認められますが、FBARに関しては延長はありません。延滞している場合は直ちに報告の必要性があります。
延滞報告
(1)遅延の理由説明が必要です。説明を添付してください。充分に説明することが要求されます。これは米法上の、合理的且つ相当な理由(reasonable and probable cause)を満たすことにより罰金を回避するためです。
(2)使用するフォームは過去の報告であっても現時点での最近のフォームを使用すること。
(3)過去の時点での遅延報告であっても報告時のルールに従って報告すること。
(4)報告書の1ページの左上に明記してある”amended”“訂正”ボックスにxを入れ、その上に訂正年度を記入してください。大変明白になっています。
(5)訂正をするオリジナルの報告書を添付しないこと。
(6)訂正報告をしてから訂正に必要な期間は120日かかります。
記録の保存期間
報告書並びにその立証書類の保存期間は6月30日から5年間です。(例)2012/06/30から2017/06/30。
記録保存の例外として、例えば従業員が雇用者の署名権限を与えられている場合、被雇用者は報告書並びに立証書類の保管の責任はありません。
報告年度
毎歴年です。会社の会計年度とか税金年度とは関係がありません。
FBAR用語の説明
Personの意味
個人、法的実在(法人、パートナーシップ、有限責任会社、信託、財産権等)また法的実在ではあっても、税法上、法人として扱われず、個人申告に該当するような、社員一人の有限責任会社や譲与者信託はpersonとみなされます。
例題:
カリフォルニア法人が外国に小会社があり、そこに銀行口座があれば、カリフォルニア法人がFBAR報告をする。ところがこの法人の一人の株主がこの法人の、直接又は間接的にしろ、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式総額の50%以上を持っているのであればその株主がFBARを報告しなければならない。
Disregarded companyと呼ばれる法人でありながら個人とみなされる、例えば、社員一人の有限責任会社が外国銀行に$10,000以上の口座を持っている場合、FBARの報告のみならず、form 8858 Information return for U.S. persons with respect to foreign disregarded companiesを内国歳入庁に提出しなければならない。TTF90を財務省に、form 8858を内国歳入庁に提出する事になる。
譲渡人が米国人(U.S. person)である外国又は米国譲与者信託に保有されている外国口座並びに外国の口座外投資資産はFBAR報告が必要です、例えば仲介業者の口座外にある投資信託とか外国生命保険の解約払戻金です。
TTDF90に使われている“米国合衆国”の意味の範囲
これは米国財務省、Treasuryのタイトル31連邦行政命令集のセクション1010.100(一般定義)に明記されています。
50の州とコロンビア特別区、アメリカンサモア、北マリアナ諸島、プエルトリコ、グアム、米国バージンアイランド並びにインディアン保留地。これ以外を外国と表現します。
報告該当者
1.米国人、ここではU.S.Personと規定されていますが、Personに関する定義は後述します。
2.銀行、証券並びにその他の金融口座が外国に存在する。
3.それらの金融口座に財務利益を有する又は法的効果をもつ署名権限やその他の権限をそれらの金融口座に持っていて、且つその該当する年度においてどの時点でも金額の総計が$10,000以上であった口座。
U.S. Person米国人とは:
米国市民
米国居住外国人:内国歳入法典7701(b)(1)(A)(i)にあるグリーンカード保持者
内国歳入法典7701(b)(1)(A)(ii)にある実質滞在テストを満足させる人
内国歳入法典7701(b)(1)(A)(iii)にある居住者としての条約選択者
連邦行政命令集のタイトル31 Money and Finance下の米国の定義を満たすもの
上記の定義による米国の法律下で設定され、設立され又は構成された企業実体、すなわち法人、パートナーシップ、信託等々。
例題
日本太郎さん米国法人に単身赴任駐在となり、2011年、123日の実質滞在日を越え、米国居住外人となりました。氏の米国での住居は賃貸ですが、家族は子供の学校などの関係から日本に居り、日本に自宅があります。本来の、第一次居住地は日本です。日米租税条約4条の2節により、氏は日本の居住に該当するため2011年度は米国非居住者申告、フォーム1040NRと連邦税法基本通達のセクション 301.7701(b)-7に従い、フォーム8833の申告をしました。この場合でも、氏は日本を含む米国以外の外国口座に関する2011FBAR報告が必要とされます。
日本ひめこさん、米国グリーンカードの保持者です。米国籍の夫が他界したため、2011年、両親のいる日本に子供達と共に帰国しました。帰国後、日本で住宅を購入し、現在母校の英語の教師をしています。所法2の1の3並びに米国の滞在日数ルール並びにタイブレーカー・ルールに従い、日本国内に住所があることになり、日本の居住者に該当します。生活の収入源は主人の遺産からの各年、相当額の配当や年決めの収入があり、日本の銀行にこれらは直接振り込まれ、そこから彼女の日本の退職年金の積み建て確定拠出年金や子供達の学資保険を積建います。このような場合でも、2011年FBAR報告は必要です。さらに子供達は米国市民でありますから、もし、日本に口座があり、それらが、一年を通じて、どの時点でも$10,000を越えているのであればFBARの報告が必要とされます。
このケースとは別に、では、グリーンカードの保持者が米国を離れて外国、例えば日本に住み且つ働く場合のFBARの報告の必要性を考えてみます。合衆国法律集のタイトル26,内国歳入法典セクション7701(b)が居住者並びに非居住者の定義に関する条項ですが、この定義の中のグリーンカードテストによれば上記のような場合でも存続して米国居住外国人扱いとなります。しかし、当然、現在、生活している日本に住所を持つ者ですから、もし日米租税条約のタイブレイーカー・ルール上、日本の居住者と判定するのであれば、米国の税規範は米国税法上非居住者外国人として判別します。それでは日本にある金融口座のEBAR報告義務はといえば、$10,000を超過していれば、報告義務があります。
Financial Interest(金銭上の利害関係)とは:
具体的にFBAR上での金融的利害関係、金融利権を下記します:
米国人(US Person)で公式記録の保持者又はコモンロー上の権限の保持者(例えば信託の様な他人の為に保有する権限)をファイナンシャル インタレスト、金融上の利害関係も持っているといいます。
従って米国人(上記のUS Person)の代理人、例えばエージェント、受け取り名義人のような名義人、弁護士を指します。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式総額の50%以上を所有している法人は金融上での利害関係があります。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、利益又は資本からの権利を50%以上所有しているパートナーシップ。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式又は資産又は利益の総額の50%以上を所有しているその他の法主体。
米国人(US Person)が譲与者信託の譲渡人で内国歳入法典のセクション671-679下にある信託に対して所有権を持っている信託。注:セクション671-679は信託の収益、経費、所有権の形などを規定している内国歳入法典の節。
米国人(US Person)が信託資産の50%以上の受益的権利又は信託収益の50%以上を受ける信託。
以上が合衆国法律集のタイトル26で定義されているfinancial interestの意味です。
例題:
ナンシー三世さんは米国市民です。米国本社から日本支社の経理部に転勤になりました。ナンシー嬢の仕事は給料日に米国本社のメインバンクに連絡をとり、日本の銀行、2行の給与口座に給与に必要な金額のワイヤートランスファーを許可する権限を持っていますが、サイン権は持っていません。日本の一行の口座残高は500,000円あり、もう一行には700,000円残高があります。この場合でも三世嬢はFBAR報告の必要性があります。金額が両方で$10,000を超過しているのと同時にサイン権は有してないがメインバンクから日本の2行への送金を管理する権限を持っているからです。外国の銀行への送金を管理する権限がFBAR報告の対象となるのです。
例題
駐在次郎さんは米国居住者です。日本には彼の両親が有料老人ホーム入居で特別介護を受けています。その為、駐在氏はご両親の米国委任状power of attorney、を持っています。まだ一度も行使したことはありません。両親の金融関係の口座は日本にあります。もし米国委任状が駐在氏に署名権限又はそれに類似した権限を与えているのであれば、駐在氏はFBAR報告の必要性があります。今までそのような権限を施行したことの有無は対象外です。またそれらの口座に対して駐在氏の権益の有無も関係ありません。2012年2月14日のFinCEN(財務省、FinCENのDirector, James H. Freis)通知2012-1によれば外国金融口座の署名権限に関する2011年度並びにそれ以前のFBAR報告期限は2013年6月30日まで延長になりました。この期間であれば罰金はありません。
日本の自動車メーカーの様にカルフォルニア法人を設立し、そのカリフォルニア法人がさらに100%株保有のメキシコ法人を持っている場合、カルフォルニア法人はメキシコ法人の金融口座をFBAR報告をしなければならない、無論口座残高$10,000を超過している場合ですが。ここでの法的理由はカルフォルニア法人は米国人(US Person)であることと、メキシコ法人の株式の50%の直接保有していることによるコモン・ロー上の権限、つまり会社の所有権を持ち、そしてその記録の所有者であるからです。
署名権限またはその他の権限の意味
これはその個人が資産の処分を管理出来ることを意味し、それだけではなく、この管理権は他の人と共同で行使出来ることも含むし、金融機関と直接対話する立場にあることを意味する、ここでの対話とは書面をも含む。そうすると、パスワードを使用してのインターネット上の取引権限も含まれると解釈出来る。報告基準額が$10,000以下の場合は例外とする。
金融口座の定義
銀行口座
証券口座
その他:金融関係の代理人として預金などを受理する商売に従事している人の口座、
解約払戻金付きの生命保険契約や年金契約、
先物取引、オプション、又は商品取引のブローカーやデイーラーとの口座
基金型の投資信託(ミューチャルファンド)又はその他の共同出資ファンド
例外:
外国のヘッジファンドとプライベイト・エクイティ・ファンドへの投資は金融口座の定義に該当しません。米国人が直接保有しているボンド、証券、株式証書は開示の必要がない。ところが同様な証券でもそれが外国のブローカーの口座にあるとFBAR報告の対象となる。
外国金融口座とは:
該当口座は外国に存在する。それは外国という地形的な場所であり、外国銀行という意味ではない。つまり、みずほ銀行のニューヨーク支店に口座があるのは報告の要はなく、報告しなければならないのはニューヨーク銀行の東京支店の口座である。外国の定義は上記参照。
例題:
駐在太郎さんは米国居住者です。大手フランス銀行の米国小会社銀行に円口座を開いたところ円口座はその銀行のケーマン諸島支店に開設されていました。この場合、FBAR報告の必要性があります。ケイマン諸島口座は外国口座です。
合計価額の意味
その口座の最高価値の合計額が$10,000を超過していれば、FBAR報告はしなければなりません。その人が外国口座に総額で$10,000以上所有していない場合並びにもしその年度中に米国人(U.S. person)が署名権限を有している外国口座を有していない場合、FBAR報告の必要性はありません。
例題:
駐在氏は米国居住者です。日本の銀行、3行に、年度中、最高のバランスがそれぞれ米ドルに換算して、$1,000, $5,000,そして$9,000でした。この場合、FBARの報告が必要です。総額が$10,000を超過しています。各行のバランスが$10,000以下でも各行のバランスの報告が必要です。
ここまでは報告の必要性を説明しましたが、以下が報告の例外です。
報告の例外
口座を夫婦の両名義で保有している場合、その内の片方がFBAR報告をすれば伴侶は報告の要無し。ただし以下の条件を満たす場合です:
1.報告をしない伴侶の金融口座はすべて両名義の口座である。
2.報告をする伴侶はFRAR報告を報告期限内に例外なく報告している。報告期限は時宜を満たしている。
3.夫婦ともFBAR報告用紙の項目44に両名とも署名すること。注:かなりスペースが狭いことに留意。Part IIIの25から33に報告をしない伴侶の名前、住所などを記入します。項目25のprincipal joint ownerとは報告をしない方の伴侶の意味です。
連結報告
総合金融口座の50%以上の保有者が代表して総合口座をFBAR報告していて、その報告の中に会社名が表示されている場合、その会社はFBAR報告をする必要はない。ただし米国本社の外国小会社の外国金融口座に対して署名権やその他の権限を持っている親会社の役員や従業員はFBAR報告の義務があります。同時に米国外国小会社の役員や従業員で米国親会社の外国金融口座の署名権限を持っている場合FBAR報告の義務があります。
銀行間取引口座
銀行間の預かり、貸付口座、会計用語でnostro, vostro口座はFBAR報告の必要がありません。Nostro口座とは米国の銀行が外国に(例えば日本に)その国の貨幣(円)の銀行口座を保有している。
米国政府機関口座
米国政府実体の外国口座は報告の必要がありません。FBAR上では米国政府実体とは政府実体によって運営されている又は所有されている政府の補助部門とか代理機関である大学とかカレッジを含みます。政府関係者の退職年金や福祉給付機関も米国政府実体に含まれます。
米国政府がメンバーである外国金融機関の外国金融口座も報告の必要はありません。米国軍の軍隊銀行内の口座も報告の要無し。
個人退職勘定の所有者と受益者も退職勘定の振り込み外国金融口座の報告の必要なし。
内国歳入法典の401(a),403(a),403(b)に記載されてある退職プランの受益者並びに参加当事者は退職プランが保持している外国金融口座の報告の要無し。
外国金融口座の署名権限を持っているが、その口座の金融関係に関しては利害関係がない個人は下記の場合、FBAR報告の必要はない。
(1)連邦準備制度理事会長とかこの種の政府高官の署名権限なので以下省きます。
(2)証券取引委員会並びに商品先物取引委員会に登録している金融機関の役員並びに従業員は金融機関によって所有され、維持されている外国金融口座の署名権限をFBAR報告する必要はありません。
信託受益者の為の特別ルール
この特別ルールが該当するには信託受益者の信託資産に対する受益権利が50%以上であるか又は報告年度の信託からの収入が信託年収の50%以上の米国人(US person)であることが第一条件で且つその信託、受託者又は代理人が米国人(US person)であり、その信託の外国金融口座を開示しているFBAR報告はされている場合、信託受益者はその信託に関するFBAR報告の必要性はない。既に報告済みだからです。以上が報告の例外です。
TD F90-22.1フォームの記入の仕方
この報告書はPart 1からPart 5で構成されています。
Part 1
報告者のタイプ
一つのボックスのみ記入。
連結報告はボックスDにx記入。
aからcに該当がない場合、ボックスeにマークをつけそしてtrust, estateとかlimited liability company等と表示する。
ただし、一人社員のLLC、つまりdisregarded companyの場合は“limited liability company (D.E.)”と記入してください。(D.E.)すなわちdisregarded entityの略語です。
報告者番号
通常、個人の場合は税務申告と同様、社会保険番号ですが、H4ビザ保持者のように社会保険番号がない米国居住者は税務局から入手するindividual identification number (ITIN)又は法人の場合はemployer identification number (EIN)
注意としてこれらの番号のみスペースを空けずに記入、ハイフンなどを入れない。句読点などを入れない。
外国人は社会保険番号、ITINやEINがありませんので、正規の自国政府の公式証明書から、国籍、現住所を立証する必要があります。この現住所ですが米国在住の人はフルアドレスの住所を、私書箱は許可されません。米国外の個人も米国の郵便住所を記入する必要がありますが、もし米国住所がない場合、外国の現住所を記入してください。全ての法人は米国住所記入が義務づけられていますが、米国住所がない法人は外国の現住所を記入してください。州名や郵便コード番号がない場合は無記入。
25以上の口座所有者
Part 1の項目14に“yes”と記入し、口座数を記入し、Part IIとPart IIIは飛ばしてください。記入なし。
Part II: 個別に所有している金融口座に関する情報
個別所有
個別所有口座とは、複数の人が署名権限を持っているとは関係なく、1個人が口座に対して金銭的利害関係を持っている口座を指す。
Part III: 共同所有の金融口座に関する情報
共同所有の口座:
共同保有金融口座とは所有記録者が一人以上で、一人以上がコモンロー上の権限を持っているか又は一人以上が該当する口座に金銭利害関係がある。
共同所有者の各人が共有口座の全額を報告しなければならない。
共同所有者の数を記入する際、報告者を共同所有者の数からは省くこと。
共同所有者の実数が不明の場合、推定数を記入する。
主たる共同所有者とは:
主たる共同所有者とはその外国金融口座の記録の所有者又はコモン・ロー上の権限を持つ人。
夫婦が共同所有者の場合、報告者の伴侶が主たる共同所有者となりますので、項目26,
主たる共同所有者の姓名記入欄に姓名を記入した後に(spouse)と付け加えてください。
Part IV
署名権限が付帯している口座
署名権限とは銀行又はその他の金融機関に書面またはその他の手段で外国金融口座に保有されている資産の譲渡・処分を操作する為のある個人一人又はその他の人との共同の権限です。25以上の外国金融口座に対して署名権限を持つ報告者はPart IVの項目34から43のみに署名権限を預かっている各人の名前、住所などを記入します。、海外に在住している米国人(U.S. Person)で海外に拠点を持つ会社の役員又は従業員で雇用されている会社が所有し且つ維持している外国金融口座の署名権限を持っている場合、Part Iの報告者情報とPart IVの34から43のみ記入し、その他の項目15から23の最高金額とか金融機関に関す情報は記入する必要はありません。
Part V 連結報告書の作成
ある米国法人がFBAR報告義務をもつ会社を支配従属下にある場合(50%以上を),
関連企業全体として一個のFBAR報告書を提出することが出来る。
50%所有権とは直接又は間接的で、全株式の50%又は全てのクラスの株式の全投票評決権の50%以上を意味します。パートナーシップの場合は収益又は資金の50%以上、信託の場合は信託資産又は収益に対する現受益権が50%以上の場合を意味します。
一人社員の有限責任会社(LLC)はFBAR上ではdisregardedではregarded、つまり普通の有限責任会社として扱われることに留意。
最高額の限界の定め方。
その口座が表示している貨幣単位での各口座の最高額の定め方とは:
1.該当年度の該当する口座にある貨幣の最高値又は非貨幣的資産の妥当な近似値
2.該当年の最高値を公正に反映している定期的に送られてくる残高証明書の数字。
もし報告者が一つ以上の口座に金融利害関係も持っている場合、各口座額は個別に表示されなければならない。
米ドル以外の口座の両替レートはその年の最終日の米国財務省の財務管理サービスレート,
(Treasury’s Financial Management Service Rate)(www.fms.treas.gov/intn.html)で換算する。もし財務省のFMSレートが入手不可能な場合、その他の確証できる為替レートを使用し、そのレートの出所を明示すること。
金額が未確定の場合
該当年の総括して口座の最高値が$10,000を超過しているかどうかが確認出来ないような口座であっても、その口座数が25以下の場合、口座に金銭的利害関係又は署名権限を持つ米国人(U.S. person)はFBAR報告はしなければならない。Part II, III, IVを各口座に適応するよう記入し, 15に“Value Unknown”(未確認値)と記入する。
口座の種類
各口座を記入するごとに、口座の種類を書き込まなければならない。それには3種類がある。
1. 銀行:貯金、要求払預金、小切手、その他の銀行業による口座
2. 証券業:株式やその他の証券を売買、保管、取引をする事業に従事している人ににより維持されて口座
3.その他:ここで口座を”Other”その他と記入した場合、報告者は口座の種類・特徴を説明しなければならない、例えば、預金や保証金などを受け取る業種にある口座を預金代理店と説明したり、金銭価値のある保険、年金ポリシーとか商品取引所の監督下にある先物やオプション取引のブローカーやデイラーとの口座とかミューチュアル・ファンドや合同収益基金やその他の投資ファンドとか以上が全てではありませんが、以上の様な説明が必要です。
外国金融口座
外国金融口座とは米国の外にある金融口座を意味します。FBAR報告では米国外にある米国銀行の支店で維持されている口座は外国金融口座です。内国歳入庁のフォーム8938と異なる点に留意してください。
外国口座に該当しない口座とは:
外国銀行の米国内に所在する外銀の支店にある口座。
米国政府がメンバーである国際金融機関にある口座。
米軍の銀行機関にある口座
銀行間の決済や預かり貸付口座、会計用語でnostro, vostro口座。
口座番号
金融機関が口座を明示している番号。
FBARの署名:誰のサインが必要か?
フォームのPart Iに名前が明記してある人が署名しなければなりません。FBARがパートナーシップや有限責任会社、信託、遺産又はその他の法主体の為に報告される場合、これらの代理権を持つ者が署名しなければなりません。署名に代理権者のタイトルを添えること。上記しましたが共同所有者となっている伴侶、別個のFBARを報告しない、は共同所有口座に両名とも署名しなければなりません。
罰則
罰 民事罰 刑事罰 出典
過失違反 最高$500 なし 31 USC 5321(a)(6)(A)
非故意違反 各過失違反に関し なし 31 USC 5321(a)(5)(B)
$10,000
過失行為のパターン 過失違反に加えて、最高 31USC5321(a)(6)(B)
$50,000
故意による無報告と判定されるとタイトル31下では、罰は$100,000又は外国金融口座の該当年の6月30日バランス額の50%の算出額の大きい額。
ところが例えば2年間、報告が故意に未報告とみなされた場合、罰は以下のようになります。注:FBARのケースでは、過失の故意性の立証責任は政府側にあります。
例えば未報告が2009の$200,000が, 2010, 2011年と有り、3%の利息が加算されていたとします。
年 未報告額 罰金
2011 200,000 100,000
2010 206,000 103,000
2009 212,180 106,090
計 309,090
刑事責任:当然避けなければならないのはFBAR報告の故意的な違反行為であり、それは31下では重罪とされ、懲役5年、又は$250,000の罰金又はその両方となっています。意図的な不従順と判定されると、さらに刑罰は重くなります。さらにFBARの報告違反は内国歳入法典内の処罰規定と重なり刑罰は重くなります。
FBAR方向書と税申告上での開示との関係
下記の税申告フォームとの数字の一致を確認することが大切です:
個人申告書:2011年度のフォーム1040のスケジュールB.
信託申告書:2011年度のフォーム1041の”Other information”その他の情報セクション。
パートナーシップ申告書:2011年度のフォーム1065のスケジュールB.
法人申告書:2011年度のフォーム1120のスケジュールN.
その他の所得税申告にも似通った質問事項があるのに注意すること。
外国銀行並びに外国金融口座の報告義務
上田 稔 CPA, CGMA
Bank Secrecy Act,銀行秘密法、略称 BSAによれば、米国人(US Person)と総称される米国居住者を含む者が米国外の銀行やその他の金融機関に$10,000以上の金融資産を保有していたり、それに金銭的な利害関係を持っているとすると報告義務が生じる。この報告書はReport of Foreign Bank and Financial Accounts, 通称、FBARと呼ばれ、報告するフォームの名前がTD F 90-22.1です。FBARは税金の申告書ではありません。申告書の8923, FACTAではありません。FBARの報告先はFinCen(以下、フィンセン)と呼ばれる米国財務省の中の一部門の金融犯罪執行機関です。2004年以前、このフォームの報告義務は存在していたにもかかわらず、過失から報告をしないことがあって罰則はなかったに等しく、同時に報告のルールの管理が以前はフィンセンの管理下にあって、極めて限られた指導と監督指揮下にあった。これが、俄然、近年に入って、民事並びに刑事制裁を含む相当な罰金・制裁金を科すようになった。タイトル31下では、FBAR報告の故意の違反罰の刑罰は罰金$250,000、懲役5年又は両方です。金融犯罪執行機関と内国歳入庁が一体となって海外に置かれている金融資産を把握使用としている。ここに課税を逃れてきた多くの課税対象資産をあぶり出そうとしている。FBAR報告をすることにより、自主的に海外にある該当金融口座の報告を求めた。そして過去の未報告に対して、つまり過去の罪に対して自主的に名乗って出るようにOVDPというプログラムを打ち出した。2009年のことでした。OVDPとはOffshore Voluntary Disclosure Program, オフショアー自主開示プログラムの略で、今、進んで自白するのであれば罰金を軽減するという招待状であった。そして2011年、今度はOVDIと銘打って二度目の自白招待状を出した。OVDIとはOffshore Voluntary Disclosure Initiative オフショアー自主開示イニシアチブの略で、ここでは前回よりも多くの要求事項、例えば延滞されている全ての年の税金の申告書並びにFBAR報告書とこの期間の海外金融口座の最高額の25%に等しい罰金を科する等があった。OVDIはその年の9月9日に締め切られた。OVDPとOVDIが告示されたこの間、今までFBAR報告を無視してきた申告者・報告者達には複雑な心の葛藤があったと思う。自首すれば、多額の税金と金利と延滞金などの支払いを迫られるし、同時に全ての金融活動に対する監査が行われることになる。もし無視するには、どのような対策があるか?自首せずに、修正申告・報告をしてしまう。このような方法をQuiet Disclosure, “こっそり開示”、“しらばっくれ開示”と呼ぶ。“OVDP/OVDI、知りませんでした。過去の未報告は進んで修正申告・報告をしてあります”と修正申告を完了したことを既成事実化することにより罰金や監査をのがれようとする意図である。2011年5月19日、内国歳入庁とフィンセンはこのような手法に明白な答えを出した。*Schiavo Caseです。ここではこの判例の詳細を避けますがボストン銀行の役員のSchiavoが“こっそり開示”を2003年から2008年の間のHSBC銀行の外国金融口座の未報告・未申告することにより意図的にOVDP/OVDIを逃れようとした等の罪状で民事罰の制裁金$76,283(HSBC口座の最高額の50%)と懲役5年の刑と$250,000の刑事罰に直面している。 *(全米公認会計士税務月刊2012年5月号参照.)
FBAR報告をする場合、TDF90-22.1フォームの最新版を使用してください。最新版は2012年1月の日付のものです。過去の報告でそれを現段階で訂正する場合もこの最新のフォームを使用して下さい。過去のフォームを使用した場合、送り返されます。正しいフォームでの最報告が要求されます。日付はTDF90-22.1フォームの1ページ左上のこのフォーム名の下のカッコ内に明示してあります。現時点の最新の表示は(Rev. January 2012)です。
締め切り日が6月30日です。ここでも税務申告とは異なります。延期はありません。この書類の財務省への到着日が6月30日であり、郵便局投稿日ではありません。要注意です
普通便の投稿先はDepartment of the Treasury
P.O. Box 32621
Detroit, Michigan 48232-0621。
持参する場合は:米国大使館、必ず受領書を受け取ること。又はフォームの一ページ目のコピーを持参し、その上に受取日のはんこを押してもらうのも一つの方法です。
E-file
本年度は自主的ですが、予想としては来年からは強制されると思います。
http://bsaefiling.fincen.tres.gov
画面上にBSA E-filing Systemと表示があり、ここに書かれているインストラクションに従って所要とされる番号などをもらいますが,
www.basefiling.fincen.treas.gov/Enroll Indivisual.html
を開き、登録してください。BSAなる略語が使われますがFinCEN関係で使われる場合、その意味はBank Secrecy Act of 1970、つまり1970年の貨幣並びに外国取引報告法の略です。BSAは他の意味にも良く使われるので、要注意です。また税の申告の場合は申告日の延長などが認められますが、FBARに関しては延長はありません。延滞している場合は直ちに報告の必要性があります。
延滞報告
(1)遅延の理由説明が必要です。説明を添付してください。充分に説明することが要求されます。これは米法上の、合理的且つ相当な理由(reasonable and probable cause)を満たすことにより罰金を回避するためです。
(2)使用するフォームは過去の報告であっても現時点での最近のフォームを使用すること。
(3)過去の時点での遅延報告であっても報告時のルールに従って報告すること。
(4)報告書の1ページの左上に明記してある”amended”“訂正”ボックスにxを入れ、その上に訂正年度を記入してください。大変明白になっています。
(5)訂正をするオリジナルの報告書を添付しないこと。
(6)訂正報告をしてから訂正に必要な期間は120日かかります。
記録の保存期間
報告書並びにその立証書類の保存期間は6月30日から5年間です。(例)2012/06/30から2017/06/30。
記録保存の例外として、例えば従業員が雇用者の署名権限を与えられている場合、被雇用者は報告書並びに立証書類の保管の責任はありません。
報告年度
毎歴年です。会社の会計年度とか税金年度とは関係がありません。
FBAR用語の説明
Personの意味
個人、法的実在(法人、パートナーシップ、有限責任会社、信託、財産権等)また法的実在ではあっても、税法上、法人として扱われず、個人申告に該当するような、社員一人の有限責任会社や譲与者信託はpersonとみなされます。
例題:
カリフォルニア法人が外国に小会社があり、そこに銀行口座があれば、カリフォルニア法人がFBAR報告をする。ところがこの法人の一人の株主がこの法人の、直接又は間接的にしろ、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式総額の50%以上を持っているのであればその株主がFBARを報告しなければならない。
Disregarded companyと呼ばれる法人でありながら個人とみなされる、例えば、社員一人の有限責任会社が外国銀行に$10,000以上の口座を持っている場合、FBARの報告のみならず、form 8858 Information return for U.S. persons with respect to foreign disregarded companiesを内国歳入庁に提出しなければならない。TTF90を財務省に、form 8858を内国歳入庁に提出する事になる。
譲渡人が米国人(U.S. person)である外国又は米国譲与者信託に保有されている外国口座並びに外国の口座外投資資産はFBAR報告が必要です、例えば仲介業者の口座外にある投資信託とか外国生命保険の解約払戻金です。
TTDF90に使われている“米国合衆国”の意味の範囲
これは米国財務省、Treasuryのタイトル31連邦行政命令集のセクション1010.100(一般定義)に明記されています。
50の州とコロンビア特別区、アメリカンサモア、北マリアナ諸島、プエルトリコ、グアム、米国バージンアイランド並びにインディアン保留地。これ以外を外国と表現します。
報告該当者
1.米国人、ここではU.S.Personと規定されていますが、Personに関する定義は後述します。
2.銀行、証券並びにその他の金融口座が外国に存在する。
3.それらの金融口座に財務利益を有する又は法的効果をもつ署名権限やその他の権限をそれらの金融口座に持っていて、且つその該当する年度においてどの時点でも金額の総計が$10,000以上であった口座。
U.S. Person米国人とは:
米国市民
米国居住外国人:内国歳入法典7701(b)(1)(A)(i)にあるグリーンカード保持者
内国歳入法典7701(b)(1)(A)(ii)にある実質滞在テストを満足させる人
内国歳入法典7701(b)(1)(A)(iii)にある居住者としての条約選択者
連邦行政命令集のタイトル31 Money and Finance下の米国の定義を満たすもの
上記の定義による米国の法律下で設定され、設立され又は構成された企業実体、すなわち法人、パートナーシップ、信託等々。
例題
日本太郎さん米国法人に単身赴任駐在となり、2011年、123日の実質滞在日を越え、米国居住外人となりました。氏の米国での住居は賃貸ですが、家族は子供の学校などの関係から日本に居り、日本に自宅があります。本来の、第一次居住地は日本です。日米租税条約4条の2節により、氏は日本の居住に該当するため2011年度は米国非居住者申告、フォーム1040NRと連邦税法基本通達のセクション 301.7701(b)-7に従い、フォーム8833の申告をしました。この場合でも、氏は日本を含む米国以外の外国口座に関する2011FBAR報告が必要とされます。
日本ひめこさん、米国グリーンカードの保持者です。米国籍の夫が他界したため、2011年、両親のいる日本に子供達と共に帰国しました。帰国後、日本で住宅を購入し、現在母校の英語の教師をしています。所法2の1の3並びに米国の滞在日数ルール並びにタイブレーカー・ルールに従い、日本国内に住所があることになり、日本の居住者に該当します。生活の収入源は主人の遺産からの各年、相当額の配当や年決めの収入があり、日本の銀行にこれらは直接振り込まれ、そこから彼女の日本の退職年金の積み建て確定拠出年金や子供達の学資保険を積建います。このような場合でも、2011年FBAR報告は必要です。さらに子供達は米国市民でありますから、もし、日本に口座があり、それらが、一年を通じて、どの時点でも$10,000を越えているのであればFBARの報告が必要とされます。
このケースとは別に、では、グリーンカードの保持者が米国を離れて外国、例えば日本に住み且つ働く場合のFBARの報告の必要性を考えてみます。合衆国法律集のタイトル26,内国歳入法典セクション7701(b)が居住者並びに非居住者の定義に関する条項ですが、この定義の中のグリーンカードテストによれば上記のような場合でも存続して米国居住外国人扱いとなります。しかし、当然、現在、生活している日本に住所を持つ者ですから、もし日米租税条約のタイブレイーカー・ルール上、日本の居住者と判定するのであれば、米国の税規範は米国税法上非居住者外国人として判別します。それでは日本にある金融口座のEBAR報告義務はといえば、$10,000を超過していれば、報告義務があります。
Financial Interest(金銭上の利害関係)とは:
具体的にFBAR上での金融的利害関係、金融利権を下記します:
米国人(US Person)で公式記録の保持者又はコモンロー上の権限の保持者(例えば信託の様な他人の為に保有する権限)をファイナンシャル インタレスト、金融上の利害関係も持っているといいます。
従って米国人(上記のUS Person)の代理人、例えばエージェント、受け取り名義人のような名義人、弁護士を指します。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式総額の50%以上を所有している法人は金融上での利害関係があります。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、利益又は資本からの権利を50%以上所有しているパートナーシップ。
米国人(US Person)が直接又は間接的に、議決権株式の50%以上を保有している場合又は株式又は資産又は利益の総額の50%以上を所有しているその他の法主体。
米国人(US Person)が譲与者信託の譲渡人で内国歳入法典のセクション671-679下にある信託に対して所有権を持っている信託。注:セクション671-679は信託の収益、経費、所有権の形などを規定している内国歳入法典の節。
米国人(US Person)が信託資産の50%以上の受益的権利又は信託収益の50%以上を受ける信託。
以上が合衆国法律集のタイトル26で定義されているfinancial interestの意味です。
例題:
ナンシー三世さんは米国市民です。米国本社から日本支社の経理部に転勤になりました。ナンシー嬢の仕事は給料日に米国本社のメインバンクに連絡をとり、日本の銀行、2行の給与口座に給与に必要な金額のワイヤートランスファーを許可する権限を持っていますが、サイン権は持っていません。日本の一行の口座残高は500,000円あり、もう一行には700,000円残高があります。この場合でも三世嬢はFBAR報告の必要性があります。金額が両方で$10,000を超過しているのと同時にサイン権は有してないがメインバンクから日本の2行への送金を管理する権限を持っているからです。外国の銀行への送金を管理する権限がFBAR報告の対象となるのです。
例題
駐在次郎さんは米国居住者です。日本には彼の両親が有料老人ホーム入居で特別介護を受けています。その為、駐在氏はご両親の米国委任状power of attorney、を持っています。まだ一度も行使したことはありません。両親の金融関係の口座は日本にあります。もし米国委任状が駐在氏に署名権限又はそれに類似した権限を与えているのであれば、駐在氏はFBAR報告の必要性があります。今までそのような権限を施行したことの有無は対象外です。またそれらの口座に対して駐在氏の権益の有無も関係ありません。2012年2月14日のFinCEN(財務省、FinCENのDirector, James H. Freis)通知2012-1によれば外国金融口座の署名権限に関する2011年度並びにそれ以前のFBAR報告期限は2013年6月30日まで延長になりました。この期間であれば罰金はありません。
日本の自動車メーカーの様にカルフォルニア法人を設立し、そのカリフォルニア法人がさらに100%株保有のメキシコ法人を持っている場合、カルフォルニア法人はメキシコ法人の金融口座をFBAR報告をしなければならない、無論口座残高$10,000を超過している場合ですが。ここでの法的理由はカルフォルニア法人は米国人(US Person)であることと、メキシコ法人の株式の50%の直接保有していることによるコモン・ロー上の権限、つまり会社の所有権を持ち、そしてその記録の所有者であるからです。
署名権限またはその他の権限の意味
これはその個人が資産の処分を管理出来ることを意味し、それだけではなく、この管理権は他の人と共同で行使出来ることも含むし、金融機関と直接対話する立場にあることを意味する、ここでの対話とは書面をも含む。そうすると、パスワードを使用してのインターネット上の取引権限も含まれると解釈出来る。報告基準額が$10,000以下の場合は例外とする。
金融口座の定義
銀行口座
証券口座
その他:金融関係の代理人として預金などを受理する商売に従事している人の口座、
解約払戻金付きの生命保険契約や年金契約、
先物取引、オプション、又は商品取引のブローカーやデイーラーとの口座
基金型の投資信託(ミューチャルファンド)又はその他の共同出資ファンド
例外:
外国のヘッジファンドとプライベイト・エクイティ・ファンドへの投資は金融口座の定義に該当しません。米国人が直接保有しているボンド、証券、株式証書は開示の必要がない。ところが同様な証券でもそれが外国のブローカーの口座にあるとFBAR報告の対象となる。
外国金融口座とは:
該当口座は外国に存在する。それは外国という地形的な場所であり、外国銀行という意味ではない。つまり、みずほ銀行のニューヨーク支店に口座があるのは報告の要はなく、報告しなければならないのはニューヨーク銀行の東京支店の口座である。外国の定義は上記参照。
例題:
駐在太郎さんは米国居住者です。大手フランス銀行の米国小会社銀行に円口座を開いたところ円口座はその銀行のケーマン諸島支店に開設されていました。この場合、FBAR報告の必要性があります。ケイマン諸島口座は外国口座です。
合計価額の意味
その口座の最高価値の合計額が$10,000を超過していれば、FBAR報告はしなければなりません。その人が外国口座に総額で$10,000以上所有していない場合並びにもしその年度中に米国人(U.S. person)が署名権限を有している外国口座を有していない場合、FBAR報告の必要性はありません。
例題:
駐在氏は米国居住者です。日本の銀行、3行に、年度中、最高のバランスがそれぞれ米ドルに換算して、$1,000, $5,000,そして$9,000でした。この場合、FBARの報告が必要です。総額が$10,000を超過しています。各行のバランスが$10,000以下でも各行のバランスの報告が必要です。
ここまでは報告の必要性を説明しましたが、以下が報告の例外です。
報告の例外
口座を夫婦の両名義で保有している場合、その内の片方がFBAR報告をすれば伴侶は報告の要無し。ただし以下の条件を満たす場合です:
1.報告をしない伴侶の金融口座はすべて両名義の口座である。
2.報告をする伴侶はFRAR報告を報告期限内に例外なく報告している。報告期限は時宜を満たしている。
3.夫婦ともFBAR報告用紙の項目44に両名とも署名すること。注:かなりスペースが狭いことに留意。Part IIIの25から33に報告をしない伴侶の名前、住所などを記入します。項目25のprincipal joint ownerとは報告をしない方の伴侶の意味です。
連結報告
総合金融口座の50%以上の保有者が代表して総合口座をFBAR報告していて、その報告の中に会社名が表示されている場合、その会社はFBAR報告をする必要はない。ただし米国本社の外国小会社の外国金融口座に対して署名権やその他の権限を持っている親会社の役員や従業員はFBAR報告の義務があります。同時に米国外国小会社の役員や従業員で米国親会社の外国金融口座の署名権限を持っている場合FBAR報告の義務があります。
銀行間取引口座
銀行間の預かり、貸付口座、会計用語でnostro, vostro口座はFBAR報告の必要がありません。Nostro口座とは米国の銀行が外国に(例えば日本に)その国の貨幣(円)の銀行口座を保有している。
米国政府機関口座
米国政府実体の外国口座は報告の必要がありません。FBAR上では米国政府実体とは政府実体によって運営されている又は所有されている政府の補助部門とか代理機関である大学とかカレッジを含みます。政府関係者の退職年金や福祉給付機関も米国政府実体に含まれます。
米国政府がメンバーである外国金融機関の外国金融口座も報告の必要はありません。米国軍の軍隊銀行内の口座も報告の要無し。
個人退職勘定の所有者と受益者も退職勘定の振り込み外国金融口座の報告の必要なし。
内国歳入法典の401(a),403(a),403(b)に記載されてある退職プランの受益者並びに参加当事者は退職プランが保持している外国金融口座の報告の要無し。
外国金融口座の署名権限を持っているが、その口座の金融関係に関しては利害関係がない個人は下記の場合、FBAR報告の必要はない。
(1)連邦準備制度理事会長とかこの種の政府高官の署名権限なので以下省きます。
(2)証券取引委員会並びに商品先物取引委員会に登録している金融機関の役員並びに従業員は金融機関によって所有され、維持されている外国金融口座の署名権限をFBAR報告する必要はありません。
信託受益者の為の特別ルール
この特別ルールが該当するには信託受益者の信託資産に対する受益権利が50%以上であるか又は報告年度の信託からの収入が信託年収の50%以上の米国人(US person)であることが第一条件で且つその信託、受託者又は代理人が米国人(US person)であり、その信託の外国金融口座を開示しているFBAR報告はされている場合、信託受益者はその信託に関するFBAR報告の必要性はない。既に報告済みだからです。以上が報告の例外です。
TD F90-22.1フォームの記入の仕方
この報告書はPart 1からPart 5で構成されています。
Part 1
報告者のタイプ
一つのボックスのみ記入。
連結報告はボックスDにx記入。
aからcに該当がない場合、ボックスeにマークをつけそしてtrust, estateとかlimited liability company等と表示する。
ただし、一人社員のLLC、つまりdisregarded companyの場合は“limited liability company (D.E.)”と記入してください。(D.E.)すなわちdisregarded entityの略語です。
報告者番号
通常、個人の場合は税務申告と同様、社会保険番号ですが、H4ビザ保持者のように社会保険番号がない米国居住者は税務局から入手するindividual identification number (ITIN)又は法人の場合はemployer identification number (EIN)
注意としてこれらの番号のみスペースを空けずに記入、ハイフンなどを入れない。句読点などを入れない。
外国人は社会保険番号、ITINやEINがありませんので、正規の自国政府の公式証明書から、国籍、現住所を立証する必要があります。この現住所ですが米国在住の人はフルアドレスの住所を、私書箱は許可されません。米国外の個人も米国の郵便住所を記入する必要がありますが、もし米国住所がない場合、外国の現住所を記入してください。全ての法人は米国住所記入が義務づけられていますが、米国住所がない法人は外国の現住所を記入してください。州名や郵便コード番号がない場合は無記入。
25以上の口座所有者
Part 1の項目14に“yes”と記入し、口座数を記入し、Part IIとPart IIIは飛ばしてください。記入なし。
Part II: 個別に所有している金融口座に関する情報
個別所有
個別所有口座とは、複数の人が署名権限を持っているとは関係なく、1個人が口座に対して金銭的利害関係を持っている口座を指す。
Part III: 共同所有の金融口座に関する情報
共同所有の口座:
共同保有金融口座とは所有記録者が一人以上で、一人以上がコモンロー上の権限を持っているか又は一人以上が該当する口座に金銭利害関係がある。
共同所有者の各人が共有口座の全額を報告しなければならない。
共同所有者の数を記入する際、報告者を共同所有者の数からは省くこと。
共同所有者の実数が不明の場合、推定数を記入する。
主たる共同所有者とは:
主たる共同所有者とはその外国金融口座の記録の所有者又はコモン・ロー上の権限を持つ人。
夫婦が共同所有者の場合、報告者の伴侶が主たる共同所有者となりますので、項目26,
主たる共同所有者の姓名記入欄に姓名を記入した後に(spouse)と付け加えてください。
Part IV
署名権限が付帯している口座
署名権限とは銀行又はその他の金融機関に書面またはその他の手段で外国金融口座に保有されている資産の譲渡・処分を操作する為のある個人一人又はその他の人との共同の権限です。25以上の外国金融口座に対して署名権限を持つ報告者はPart IVの項目34から43のみに署名権限を預かっている各人の名前、住所などを記入します。、海外に在住している米国人(U.S. Person)で海外に拠点を持つ会社の役員又は従業員で雇用されている会社が所有し且つ維持している外国金融口座の署名権限を持っている場合、Part Iの報告者情報とPart IVの34から43のみ記入し、その他の項目15から23の最高金額とか金融機関に関す情報は記入する必要はありません。
Part V 連結報告書の作成
ある米国法人がFBAR報告義務をもつ会社を支配従属下にある場合(50%以上を),
関連企業全体として一個のFBAR報告書を提出することが出来る。
50%所有権とは直接又は間接的で、全株式の50%又は全てのクラスの株式の全投票評決権の50%以上を意味します。パートナーシップの場合は収益又は資金の50%以上、信託の場合は信託資産又は収益に対する現受益権が50%以上の場合を意味します。
一人社員の有限責任会社(LLC)はFBAR上ではdisregardedではregarded、つまり普通の有限責任会社として扱われることに留意。
最高額の限界の定め方。
その口座が表示している貨幣単位での各口座の最高額の定め方とは:
1.該当年度の該当する口座にある貨幣の最高値又は非貨幣的資産の妥当な近似値
2.該当年の最高値を公正に反映している定期的に送られてくる残高証明書の数字。
もし報告者が一つ以上の口座に金融利害関係も持っている場合、各口座額は個別に表示されなければならない。
米ドル以外の口座の両替レートはその年の最終日の米国財務省の財務管理サービスレート,
(Treasury’s Financial Management Service Rate)(www.fms.treas.gov/intn.html)で換算する。もし財務省のFMSレートが入手不可能な場合、その他の確証できる為替レートを使用し、そのレートの出所を明示すること。
金額が未確定の場合
該当年の総括して口座の最高値が$10,000を超過しているかどうかが確認出来ないような口座であっても、その口座数が25以下の場合、口座に金銭的利害関係又は署名権限を持つ米国人(U.S. person)はFBAR報告はしなければならない。Part II, III, IVを各口座に適応するよう記入し, 15に“Value Unknown”(未確認値)と記入する。
口座の種類
各口座を記入するごとに、口座の種類を書き込まなければならない。それには3種類がある。
1. 銀行:貯金、要求払預金、小切手、その他の銀行業による口座
2. 証券業:株式やその他の証券を売買、保管、取引をする事業に従事している人ににより維持されて口座
3.その他:ここで口座を”Other”その他と記入した場合、報告者は口座の種類・特徴を説明しなければならない、例えば、預金や保証金などを受け取る業種にある口座を預金代理店と説明したり、金銭価値のある保険、年金ポリシーとか商品取引所の監督下にある先物やオプション取引のブローカーやデイラーとの口座とかミューチュアル・ファンドや合同収益基金やその他の投資ファンドとか以上が全てではありませんが、以上の様な説明が必要です。
外国金融口座
外国金融口座とは米国の外にある金融口座を意味します。FBAR報告では米国外にある米国銀行の支店で維持されている口座は外国金融口座です。内国歳入庁のフォーム8938と異なる点に留意してください。
外国口座に該当しない口座とは:
外国銀行の米国内に所在する外銀の支店にある口座。
米国政府がメンバーである国際金融機関にある口座。
米軍の銀行機関にある口座
銀行間の決済や預かり貸付口座、会計用語でnostro, vostro口座。
口座番号
金融機関が口座を明示している番号。
FBARの署名:誰のサインが必要か?
フォームのPart Iに名前が明記してある人が署名しなければなりません。FBARがパートナーシップや有限責任会社、信託、遺産又はその他の法主体の為に報告される場合、これらの代理権を持つ者が署名しなければなりません。署名に代理権者のタイトルを添えること。上記しましたが共同所有者となっている伴侶、別個のFBARを報告しない、は共同所有口座に両名とも署名しなければなりません。
罰則
罰 民事罰 刑事罰 出典
過失違反 最高$500 なし 31 USC 5321(a)(6)(A)
非故意違反 各過失違反に関し なし 31 USC 5321(a)(5)(B)
$10,000
過失行為のパターン 過失違反に加えて、最高 31USC5321(a)(6)(B)
$50,000
故意による無報告と判定されるとタイトル31下では、罰は$100,000又は外国金融口座の該当年の6月30日バランス額の50%の算出額の大きい額。
ところが例えば2年間、報告が故意に未報告とみなされた場合、罰は以下のようになります。注:FBARのケースでは、過失の故意性の立証責任は政府側にあります。
例えば未報告が2009の$200,000が, 2010, 2011年と有り、3%の利息が加算されていたとします。
年 未報告額 罰金
2011 200,000 100,000
2010 206,000 103,000
2009 212,180 106,090
計 309,090
刑事責任:当然避けなければならないのはFBAR報告の故意的な違反行為であり、それは31下では重罪とされ、懲役5年、又は$250,000の罰金又はその両方となっています。意図的な不従順と判定されると、さらに刑罰は重くなります。さらにFBARの報告違反は内国歳入法典内の処罰規定と重なり刑罰は重くなります。
FBAR方向書と税申告上での開示との関係
下記の税申告フォームとの数字の一致を確認することが大切です:
個人申告書:2011年度のフォーム1040のスケジュールB.
信託申告書:2011年度のフォーム1041の”Other information”その他の情報セクション。
パートナーシップ申告書:2011年度のフォーム1065のスケジュールB.
法人申告書:2011年度のフォーム1120のスケジュールN.
その他の所得税申告にも似通った質問事項があるのに注意すること。