社会人のための国際会計基準 (その1)
上田稔 CPA, CGMA 著
上田稔 CPA, CGMA 著
表現の問題
国際会計原則の7並びに39に出てくる言葉と表現でどうしても理解をしておかなければならなのにfair value, amortized costとeffective interest methodの3点があります。
先ず、fair value フェアバリューですが、これは後でも詳しく説明いたしますが、Fair value is the amount for which an asset could be exchanged, or a liability settled, between knowledgeable, willing parties in an arm's length transaction.
“契約能力を持つ両当事者がそれぞれ自己の利益に基づき交渉した結果、資産が交換され又は負債が決着される取引価格”です。この”契約能力をもつ云々”の表現は英米法の”契約の成立”の定義と同じものです。
フェアバリュウーに拠る評価と査定
国際会計基準の中で、Fair valueフェアバリューによる評価、査定を知ることが非常に重要な部分となります。フェアバリュー評価は国際会計での勘定科目の評価額の評価方法の標準語だと思います。では、フェアバリューとは何か?と問うと以下の表現が典型的な答えとなります。国際会計基準IFRS13によれば、Fair value is the price that would be received to sell an asset or paid to transfer a liability in an orderly transaction between market participants at the measurement date. ここで云うin an orderly transaction between markets participantsの意味は独立当事者間取引、つまり 両当事者が各々自己の利益に基づき交渉した結果成立した取引を意味します。またat the measurement dateとありますがこれは該当する取引の契約の主要な要件が全て成立した時であり、契約の要件とは当事者間の合意、対価、約因、当事者間の契約能力、目的の適法であり、一般的には書面成約が完了した時を指します。従って、フェアバリューとは実質の契約完了時に、独立当事者間取引で、資産の売却で受け取る値段、又は負債を譲渡するときに支払う値段の事です。フェアバリュー評価は特定の資産や負債の為です。資産や負債に特定した属性を考えなければならないのです。会計評価の主題は資産と負債の評価です、従って、フェアバリュー評価の定義は資産と負債に焦点を置く事になりますが、しかしながら、証券などは資本の項目の中にも分類されますから、この定義は資本の部に分類されている、フェアバリューで評価されている証券にも適応されなければなりません。
Fair valueをもう少しわかりやすく表現すれば、以下のようになります:"the amount for which an asset could be exchanged, or a liability settled, between knowledgeable, willing parties in an arm's length transaction."
フェアバリュー評価を理解するには営利を目的とした会社のバランスシートの分析をすることが入りやすい方法と考えます。
バランスシートに記載されている各価額の会計ベースを集約すると、記載されている資産の各勘定科目は原則的に以下の4つ内のどちらか一つの方法で評価、査定されています。
(1)Historical cost取得原価、
(2)current market value現在市場価格、
(3)net realizable value純実現可能価格
(4)present value of future cash flows( 将来のキャッシュフローの現在換算額)の4っです。
次ぎに、負債に関しては(3)のnet realizable amount(純実現可能価格)が負債の決済額、清算額となります。
国際会計基準を作る組織:
以下、簡単に国際会計の組織を説明します。
先ず、IASBが存在します。この組織が国際会計のルールを創設する。そしてこの国際会計ルールはIFRSとIASの二つの基準、スタンダードから構成されていると解釈しています。以下、本論に入ります。
Substance over form
グローバリゼイションのお陰で、会計の世界でも世界が一つになろうとしている。無論、これは大変な仕事でしょう。先ず、違いを数えれば、文化、法律、税法、資金源、会社の形、過去の経験等々、宗教の違いもお金の扱いに影響してくる。しかしあえてその違いを絞り込めば資金源そして法律の2点は重要です。それを乗り越えて、一つにしようとするのです。会計処理という技術面での難所といえば、研究者達の話をまとめると、次の3点が一番の難所だという。一に、各国の税法の違いだそうだ。ある国々では、会計処理は税法上の処理の影響下にあるという。次ぎに、計上資産の再評価の問題。通常、取得価格で計上することと決め込んでいると、大間違いで、ある国々では毎年、再評価をして計上するという。不動産などの場合、大きな影響が出る。最後に、取引に対する根本的な考え方の相違。我々が習慣づけられている、所謂、substance over formとする考え方が国によっては異なるというのだ。形よりもそのものの本質を計上するべきだと考えるが、国によってはそうではない。例えば、リース取引を例に挙げれば、重要なのはその取引がどう呼ばれようと、大切なのは取引上の責任や権利、そしてリスクはどちらにあり、両者の報酬は幾らかと考える。これらを分析しながら、それがリース資産かどうかを判断する。ところが国によっては、取引をする当事者がその取引をリース契約と見なすのであるならばそれはリース契約であり、資産と負債が賃貸人、lessor、の帳簿に記帳される。これを一つにまとめようとするのが国際会計基準です。米国会計原則と国際会計原則はかなり近いと云われています。しかし、大きな違いも見られると思います。一つは米国財務会計基準はhistorical costで記帳する。これが原則です。しかし国際会計原則では、固定資産と長期資産をhistorical cost からfair valueに再評価することも出来るとされています。この点を後で詳しく見ていきたいと思います。そして、このfair valueと呼ばれるコンセプトも後で充分考えてみたいと思います。(後述します)。このほかにも、例えば、DTA、繰延税金資産の例をとれば、米国財務会計基準に従えば、その資産の推定額が60,000ドル査定され、しかし将来この繰延税資産を活用出来る利益から推定すると40,000ドルしか見込めないとした場合、繰延税資産額はあくまでも60,000と計上され、そして20,000ドルの引当金を表示して、ネットで40,000ドルと表示する。国際会計基準ではあくまでもこの資産の価値は40,000ドルの資産なのだから、なにも60,000と計上する必要はなく、引当金無しの40,000のみで計上する。同じ40,000ではあるが、微妙な解釈の仕方に相違がある。それに繰り延べ税ですから当然、税率が関わってくる。米国財務会計基準では使用する税率はバランスシート日の税率だが、国際会計基準ではこれも統一出来るのだろうか?繰り延べ税が売掛金のような流動資産の帳簿率と税率の違いからから発生したのであればその繰り延べ税資産は流動資産、短期資産として計上される。流動資産以外から発生したのであれば他の長期資産と共に表示される。国際会計基準ではすべて長期資産として計上される。繰り延べ税負債も同じ考え方です。これは、無論、ほんの一例でしかないが、あくまでも、物の見方、考え方の相違に興味を覚える。大きく見れば、米国にはbright line viewという表現がある。一つ一つを明確に規定して、その枠で結論を出す。ところが、世の中の取引の不雑さを考えれば、それは一つの方法にしかすぎない。国際会計基準はその点、色々なfacts and circumstancesを考慮しているのではないだろうか。一概には言えないと思う。
Facts and circumstances
例えば、米国株式会社の帳簿に一台の射出成形機を繰り越し価格として100、000ドルで計上しているとする。会社としては機械は傷んできており、この機械からの将来の現金流動は年額11,000で、この先10年間で総額110,000ドルと踏んでいる。米国財務会計基準では、ここでは二つの事をする。一つは将来の現金流動額を割り引かずに11,000で計算している。次ぎに、総額110,000ドルは簿価よりも高い。従って、痛みによる減価、減損を計上しない。一方、国際会計基準では、この場合、現在換算額、present valueを計算する。例えば割引率5%を使い、present valueの84,939を引き出し、それと簿価の差額15,061を減損額として計上する。割引率を高めれば減損額も大きくなる。現在、米国財務会計基準をとるか、国際会計基準をとるか、その違いを縮めるべく、両者で協議中である。このように現段階では決まっていない部分もありますが、兎に角、わかっている部分から、エッセイの形で紹介していきます。
また 英米法と大陸法の違いから来るのか、同じ法律用語を使いながら、厳密に言うと、意味が異なる。その一つがprobableという表現です(下記参照)。日本語では“蓋然性”と訳され、あることが実際に起こるか否かの確実性の度合いを意味する。確率を意味する。問題はこの「度合い」という部分に違いが起きるのです。会計上では“漠然”は許されず、常に数値で表現しなければならない。英米法ではこの度合いを、確率を約80%と解釈している。大陸法では恐らく約50%ではないでしょうか。
Contingent liability不確定債務
その一つがcontingent liabilityの問題です。偶発債務と訳す向きもありますが、私は不確定債務と訳しています。IAS 37とSFAS 5がcontingent liabilityの会計処理方法を説明していますが、両方とも引当金を算入しない事は同意しています。しかし、将来、支払いの必要性が皆無でないならば、この種の債務は脚注にての開示が必要です。IASでは発生の度合いが50%以上ですから、60%の場合、米国財務会計基準では開示はしないことになります。その会社が過去の出来事、事象の結果から現在債務を負い且つ資金の支出がprobable,プロバブルであり、且つ又その支出額が「reasonablyに」、相当に推定出来るなら、「provision」引当金は記帳されべきである。
Reasonable
ここでも法律用語、reasonableが出てまいります。要するに、思慮分別のある、一般会計人の普通の会計士判断に合するということを意味する、広い範囲の表現と解釈します。だから、これが50%と80%の差なのかもしれません。どうしても会計原則を正しく理解するには原則の中によく使われる言葉の、そして表現の真の意味を理解することが大切になります。米国財務会計基準は英語で書かれているわけですが、どこの国でも同じ事とは思われますが、会計は会計、コンピューターはコンピューター、法律は法律の各々の分野で、同じ英語で書かれていながら、その書き方、スタイル、vocabularyに各々特異性が見られます。特に法律、税法は独特な書き方と表現があります。会計分野は、幸い、表現がそれほど独特ではありませんが、どうしても法律の分野から抜けきれませんから、法律分野のvocabularyが入り込みます。
Exchange transaction
そしてそれが厳密に法律用語として使われるのではなく、会計処理上の表現として使用されますから、少々面倒な面があります。例えば、exchange transactionという表現がありますが、Meaning of exchange transactionと問われれば、会計上ではこの意味は“物と物との交換”という意味よりも、通常の“商取引”と解釈するべきです。ところが米国の税法ではこの言葉は“物物交換”の意味であり、お金以外の物との交換を意味するので注意が必要です。疑問に思われる方は次の法例を参照してください。Helvering v. William Flaccus Oak Tree Co., 313 US 247 (1941)を参照してください。会計上ではExchange transactions are transactions in which one entity receives assets or services, or has liabilities extinguished, and directly gives approximately equal value ( primarily in the form of cash, goods, services or use of assets) to another entity in exchange. 会計上ではNon-exchange transactionと云うと例えば“税金”の支払い等がその例です。
Reasonable and probable causeに関して:
英米法の世界ではreasonable and probable causeという表現がありますが、日本語訳は「合理的且つ相当な理由」と訳されていますが、この英語表現にはもう少し具体性があるようにおもいます。このprobable と云う言葉は米国憲法第4条の改正にprobable causeとして出てくるほどよく聞く言葉ですが、英国の法律学者Bryan A. Garner氏の説明にあるようにprobableの意味を理解させるために三段階の言葉を紹介しています。Probable; Likely; Possible.の三つの単語で、力の強さが減っていく順に並べてあります。強から弱への順序です。“何かがおきますよ!”(何かが起きる)という相対的可能性の段階を表現しています。さいころを振って、6がprobably「十中八九」に出るとはいわないでしょう。6が出るのはlikelyかもしれない。6が出るのはpossibleです。いかがですか。Possibleという言葉の範囲は一番広く、起きる可能性が0から100%だとGarner教授は説明しています。つまり曖昧な表現なのです。Probableは重く受け止めましょう。 Every thing is possible. なるほど!
More likely than notとは?
「more likely than not」この表現にであった方は多いと思います。この表現の特徴はmoreとthanを組み合わせる文章の特徴もあるのですが、実はポイントはそこにあるのではなく、「likely」という言葉の意味にあります。評価損額の引当金などを決めるときに使われる表現ですが、数値化が仕事の人達には苦痛です。そこで法律用語の大家Garner教授の辞書
近代法律用語の使い方に救いを求めますと曰く「likelyは微妙な違いを持っている。1から10のスケールで云えば5の上に位置する確率の度合いを往々にして示唆している。無論、likelyの前にquiteとか、very, extremely等の修飾語を付ければ5の上に位置する可能性はさらに大きくなる。それでいて、同じスケールで5以下の可能性を暗にほのめかしている。」またGlanville Williams教授が犯罪法の教科書で述べているように、likelyとは「強いpossible」であり、「弱いprobable」なんだと。
数字を考える:
会計の目的は最終的には数字で表現しなければならない。表現の仕方にも微妙な差がある。言い換えれば会計の世界ではa bicycleはbi cycleであり、2輪車です、自転車ではない。そうはいっても、an octopusはocto pus、つまり、“八足”と訳して、会計的表現ですと云っても何が何だか解らない。タコと云われて初めて意味が鮮明になってくる。それでも、”タコ“と聞いて、時と場合ではあの寅さんの隣人の印刷会社の社長さんを連想する人もいるでしょう。それでも、人間の行う商業上での取引を終局的には数字で表現することにより、少なくとも事の大小を明白にし、国は異なっても正しく価値を比較出来る土壌を創造する事に使命があるのかもしれません。数字,number,この言葉もan indo-europeanに語源がありshareとかdivision、つまり、土地などを”分け合う“という意味であったと云われています。心、暖まる説明です。しかし、numberのnumbだけを考えると古代英語では”つかみ取る“、”ぶんどる“であります。歴史的にはこれも土地の話です。北方領土問題が心に浮かびます。
資産とは何か?
IASC(International Accounting Standards Committee)
資産という概念をどう定義しているか?資産、asset,この意味をどのように考えるかはそれを考える人の立場によっても異なってくる。投資家や企業買収の立場で決算書を読めば、この土地は、この資産は今、幾らだろうかの“現在の価値”が資産価値、つまり“財産としての価値”として計算するでしょうし、企業を保有している株主の立場からみれば、資産は“将来のさらなる資産”を、“力”を、“経済的な利得”を生み出す“根源”を金額で表現した結果ととらえるでしょう。また英語圏だけを例にとっても以下のようないくらかの、微妙な表現の違いがあります。
IASC(International Accounting Standards Committee)国際会計基準
An asset is a resource controlled by the enterprise as a result of past transactions or events from which future economic benefits may be obtained,
資産とは過去における取引とか将来的に経済的な利益が得られるような出来事の結果として、その企業によって管理操作される資源である。
資産は資源だ。物理的な形態並びに所有権は資産の実在に関しては極めて重要ではない。不可欠な要素ではない。経費の発生と資産を生み出す、この両者には密接なつながりがある。しかし両方が同時に発生するとは限らない。資産を物理的に定義している様に考えられます、下記のアメリカの定義とは異なる観点です。
英国
Assets are rights or other access to future economic benefits controlled by an entity as a result of past transactions or events.
資産は権利だ、いや将来の経済的利得へのアクセスともいえる。一見、簡単な定義のように見えますが、まず、transactions or eventsの意味ですが英国では会計にこの表現が使われますと次のような意味になります。Event、イベント、この言葉の意味、 聞き慣れた言葉ですが、帰結をもたらす出来事、結果よりさらに堅い、堅実な帰結をもたらす出来事。どんな出来事かと云えば資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事。これがイベントです。このような原因や根源が外的要素によるものか内的要素によるものかは問いません。これを称してイベントと表現します。そしてtransactionとは取引なのですが、外部の2社以上との間での移行又は交換を伴う外部とのイベントを指します。従って“資産とは過去の取引や資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事の結果として、ある企業実体によって会計上管理されている将来の経済的利得や権利である。”上記のcontrolも恐らく15世紀頃の中世のラテン語 contrarotulare(会計帳簿を管理する)とかcontrole(会計帳簿)の意味を内蔵していると考えます。英国もご存じのように1066年、William公、Duke of Normandyが英国を征服して以来、俗に言うNorman Frenchという言葉が法律用語の中に見られ、例えばfee(封土権、相続可能財産権)とかtenir,これが(Tenure)(王の土地を預かり、使用する権利)であったり言葉には歴史が内蔵されています。そして長い間、欧州人は土地を、不動産を自分のものとして所有(own)したことはなく、不動産は国王の所有物であり、これを預かり・所有(possession)していたに過ぎない、したって、この結果、価値(value)に対するコンセプトが土地を、不動産を個人が所有し得るようになった現代と異なると筆者は考えています。
米国
Assets are probable future economic benefits obtained or controlled by a particular entity as a result of past transactions or events.
強い商業上の利得だ。入手又は管理できるほぼ間違いのない将来の利得である。
単なる利得ではない、いくらかの不確定要素を含んではいるが、ほぼ確実な、将来の利得だ。(Probableに関しては後述します。)ここでは英国法を継承した國ですから、表面の意味で解釈しますが、米国の資産に対する考え方はもしその企業が通常にその利得を入手・管理出来るのであれば、その入手した利得への請求権を法的に履行、強制できる事がその利得を資産として認める前提条件ではない。その他の関係はあるが、不可欠な条件ではない特徴と云えば原価取得とか、有形であるとか、交換可能等がある。資産を法的な観点から定義づけているように考えられます。物理的なものと見るより、法的に入手・管理出来るベネフィットであり、資源、a resourceとは直接、言及していない。
カナダ
Assets are economic resources controlled by an entity as a result of past transactions or events from which future economic benefits may be obtained.
資産は経済的資源だ。
豪州
“Assets” are service potential or future economic benefits controlled by the entity as a result of past transactions of other past events.
資産とは将来の経済的利得並びに潜在的なサービス業務
以上が英語圏ですが、ここに、ドイツやフランス、そしてスエーデンという深い哲学的な思考をもった諸国が入ると“資源”や“利得”ではおさまらないかも知れません。明治23年(1890)に始めて商法典が成立した日本も色々と大変でしょう。
Past transactions and eventsに関して:
Transaction or eventと云う表現が会計 法律用語の中でよく出てくるが、会計人にはtransaction,(取引)は理解が行くが、これをeventと併用して使われると何となくeventにたいして違和感がある。このeventという意味は会計や法律書の中では(訴訟の結果)と云う意味を含む、会計上、重要な出来事という意味から、(e)=外へと、(vent)=ベント、“排出”、“出ていく”から両者を足してe+vent=event. 外へ排出、外へ出てくる、つまり中で起きた出来事。兄弟用語にaccident事故、incident(小さな出来事)がある。法律の表現としてよく使われるin the eventとなると米語ではif、(もしも)の意味が強く、しかしifよりは弱い。英語ではin the event, 又はin the event ofとして表現され、“その結果”、と云う意味になる場合が多々あるから要注意です。無論、これは文学上の話ではない。会計取引と会計上の出来事です。さらにeventの意味を掘り下げていくと、この言葉の意味、イベントとは帰結をもたらす出来事、結果よりさらに堅い、堅実な帰結をもたらす出来事。どんな出来事かと云えば資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事です。これがイベントです。このようなイベントの原因や根源が外的要素によるものか内的要素によるものかは問いません。これを称してイベントと表現します。そしてtransactionとは取引なのですが、外部の2社以上との間での移行又は交換を伴う外部とのイベントを指します。
負債とは
国際会計(IASC)(International Accounting Standards Committee ·)
A liability is a present obligation of the enterprise arising from past events, the settlement of which is expected to result in an outflow from the enterprise of resources embodying economic benefits.
負債であることの主要な特徴はその企業が現時点での契約、約束、立場上などから生じる債務を、抱えている。そしてそれらの契約、約束、立場上からの債務は過去の時点で発生したものです。将来の時点で資産を取得しようとする判断は又は決断は現時点での債務を生じさせません。では、債務は何時、生じるかといえば、その資産が配達された、受け取った時点又はその資産を購入するべく撤回不能なアグリーメントを結んだ時点です。国際基準はこのような立場を示唆しています。要約すれば、過去の時点で発生した契約上の、約束をした事象の現時点での支払い義務、これが債務であるとしているのが国際会計法です。
英国
Liabilities are an entity’s obligations to transfer economic benefits as a result of past transactions or events.
負債とは過去の取引またはイベントの結果のため、経済的利得を移行する、その企業の義務・責任であります。
簡単明瞭に見えますが、前述しましたようにtransactions or eventsという表現の中に広い範囲を包み込み、それらから生じた経済的利得の外への移転義務を負債としています。負債とは利得の減少であるとでも叫んでいるように見えます。
米国
Liabilities are probable future sacrifices of economic benefits arising from present obligations of a particular entity to transfer assets or provide services to other entities in the future as a result of past transactions or events.
過去の取引やイヴェントの(広い意味を持ってますよ)結果のため、将来の時点で、他の企業に、資産を移転するか又はサービスを提供する現段階における義務・責任から生じる、ほぼ確実な未来における経済的犠牲を負債と称する。ここで、probableなる表現に留意してください。具体的に表現すれば確率として80%以上起きうる自称を意味しています。
企業は将来の犠牲を避ける選択の自由はない。しかし負債の一般的な特徴の中で主要ではない特質は現金での支払い義務とか、支払先の正体を知ることとか、法的執行度合いなどです。つまり負債とは避け得ない犠牲を指すが、負債を認識する要素としてこのような負債の特徴まで認識する必要はないとしています。
次回はrecognitionとrecognitionのcriteriaから流動資産を初めとする各会計項目の説明に入ります。
上田 稔 CPA 著
国際会計原則の7並びに39に出てくる言葉と表現でどうしても理解をしておかなければならなのにfair value, amortized costとeffective interest methodの3点があります。
先ず、fair value フェアバリューですが、これは後でも詳しく説明いたしますが、Fair value is the amount for which an asset could be exchanged, or a liability settled, between knowledgeable, willing parties in an arm's length transaction.
“契約能力を持つ両当事者がそれぞれ自己の利益に基づき交渉した結果、資産が交換され又は負債が決着される取引価格”です。この”契約能力をもつ云々”の表現は英米法の”契約の成立”の定義と同じものです。
フェアバリュウーに拠る評価と査定
国際会計基準の中で、Fair valueフェアバリューによる評価、査定を知ることが非常に重要な部分となります。フェアバリュー評価は国際会計での勘定科目の評価額の評価方法の標準語だと思います。では、フェアバリューとは何か?と問うと以下の表現が典型的な答えとなります。国際会計基準IFRS13によれば、Fair value is the price that would be received to sell an asset or paid to transfer a liability in an orderly transaction between market participants at the measurement date. ここで云うin an orderly transaction between markets participantsの意味は独立当事者間取引、つまり 両当事者が各々自己の利益に基づき交渉した結果成立した取引を意味します。またat the measurement dateとありますがこれは該当する取引の契約の主要な要件が全て成立した時であり、契約の要件とは当事者間の合意、対価、約因、当事者間の契約能力、目的の適法であり、一般的には書面成約が完了した時を指します。従って、フェアバリューとは実質の契約完了時に、独立当事者間取引で、資産の売却で受け取る値段、又は負債を譲渡するときに支払う値段の事です。フェアバリュー評価は特定の資産や負債の為です。資産や負債に特定した属性を考えなければならないのです。会計評価の主題は資産と負債の評価です、従って、フェアバリュー評価の定義は資産と負債に焦点を置く事になりますが、しかしながら、証券などは資本の項目の中にも分類されますから、この定義は資本の部に分類されている、フェアバリューで評価されている証券にも適応されなければなりません。
Fair valueをもう少しわかりやすく表現すれば、以下のようになります:"the amount for which an asset could be exchanged, or a liability settled, between knowledgeable, willing parties in an arm's length transaction."
フェアバリュー評価を理解するには営利を目的とした会社のバランスシートの分析をすることが入りやすい方法と考えます。
バランスシートに記載されている各価額の会計ベースを集約すると、記載されている資産の各勘定科目は原則的に以下の4つ内のどちらか一つの方法で評価、査定されています。
(1)Historical cost取得原価、
(2)current market value現在市場価格、
(3)net realizable value純実現可能価格
(4)present value of future cash flows( 将来のキャッシュフローの現在換算額)の4っです。
次ぎに、負債に関しては(3)のnet realizable amount(純実現可能価格)が負債の決済額、清算額となります。
国際会計基準を作る組織:
以下、簡単に国際会計の組織を説明します。
先ず、IASBが存在します。この組織が国際会計のルールを創設する。そしてこの国際会計ルールはIFRSとIASの二つの基準、スタンダードから構成されていると解釈しています。以下、本論に入ります。
Substance over form
グローバリゼイションのお陰で、会計の世界でも世界が一つになろうとしている。無論、これは大変な仕事でしょう。先ず、違いを数えれば、文化、法律、税法、資金源、会社の形、過去の経験等々、宗教の違いもお金の扱いに影響してくる。しかしあえてその違いを絞り込めば資金源そして法律の2点は重要です。それを乗り越えて、一つにしようとするのです。会計処理という技術面での難所といえば、研究者達の話をまとめると、次の3点が一番の難所だという。一に、各国の税法の違いだそうだ。ある国々では、会計処理は税法上の処理の影響下にあるという。次ぎに、計上資産の再評価の問題。通常、取得価格で計上することと決め込んでいると、大間違いで、ある国々では毎年、再評価をして計上するという。不動産などの場合、大きな影響が出る。最後に、取引に対する根本的な考え方の相違。我々が習慣づけられている、所謂、substance over formとする考え方が国によっては異なるというのだ。形よりもそのものの本質を計上するべきだと考えるが、国によってはそうではない。例えば、リース取引を例に挙げれば、重要なのはその取引がどう呼ばれようと、大切なのは取引上の責任や権利、そしてリスクはどちらにあり、両者の報酬は幾らかと考える。これらを分析しながら、それがリース資産かどうかを判断する。ところが国によっては、取引をする当事者がその取引をリース契約と見なすのであるならばそれはリース契約であり、資産と負債が賃貸人、lessor、の帳簿に記帳される。これを一つにまとめようとするのが国際会計基準です。米国会計原則と国際会計原則はかなり近いと云われています。しかし、大きな違いも見られると思います。一つは米国財務会計基準はhistorical costで記帳する。これが原則です。しかし国際会計原則では、固定資産と長期資産をhistorical cost からfair valueに再評価することも出来るとされています。この点を後で詳しく見ていきたいと思います。そして、このfair valueと呼ばれるコンセプトも後で充分考えてみたいと思います。(後述します)。このほかにも、例えば、DTA、繰延税金資産の例をとれば、米国財務会計基準に従えば、その資産の推定額が60,000ドル査定され、しかし将来この繰延税資産を活用出来る利益から推定すると40,000ドルしか見込めないとした場合、繰延税資産額はあくまでも60,000と計上され、そして20,000ドルの引当金を表示して、ネットで40,000ドルと表示する。国際会計基準ではあくまでもこの資産の価値は40,000ドルの資産なのだから、なにも60,000と計上する必要はなく、引当金無しの40,000のみで計上する。同じ40,000ではあるが、微妙な解釈の仕方に相違がある。それに繰り延べ税ですから当然、税率が関わってくる。米国財務会計基準では使用する税率はバランスシート日の税率だが、国際会計基準ではこれも統一出来るのだろうか?繰り延べ税が売掛金のような流動資産の帳簿率と税率の違いからから発生したのであればその繰り延べ税資産は流動資産、短期資産として計上される。流動資産以外から発生したのであれば他の長期資産と共に表示される。国際会計基準ではすべて長期資産として計上される。繰り延べ税負債も同じ考え方です。これは、無論、ほんの一例でしかないが、あくまでも、物の見方、考え方の相違に興味を覚える。大きく見れば、米国にはbright line viewという表現がある。一つ一つを明確に規定して、その枠で結論を出す。ところが、世の中の取引の不雑さを考えれば、それは一つの方法にしかすぎない。国際会計基準はその点、色々なfacts and circumstancesを考慮しているのではないだろうか。一概には言えないと思う。
Facts and circumstances
例えば、米国株式会社の帳簿に一台の射出成形機を繰り越し価格として100、000ドルで計上しているとする。会社としては機械は傷んできており、この機械からの将来の現金流動は年額11,000で、この先10年間で総額110,000ドルと踏んでいる。米国財務会計基準では、ここでは二つの事をする。一つは将来の現金流動額を割り引かずに11,000で計算している。次ぎに、総額110,000ドルは簿価よりも高い。従って、痛みによる減価、減損を計上しない。一方、国際会計基準では、この場合、現在換算額、present valueを計算する。例えば割引率5%を使い、present valueの84,939を引き出し、それと簿価の差額15,061を減損額として計上する。割引率を高めれば減損額も大きくなる。現在、米国財務会計基準をとるか、国際会計基準をとるか、その違いを縮めるべく、両者で協議中である。このように現段階では決まっていない部分もありますが、兎に角、わかっている部分から、エッセイの形で紹介していきます。
また 英米法と大陸法の違いから来るのか、同じ法律用語を使いながら、厳密に言うと、意味が異なる。その一つがprobableという表現です(下記参照)。日本語では“蓋然性”と訳され、あることが実際に起こるか否かの確実性の度合いを意味する。確率を意味する。問題はこの「度合い」という部分に違いが起きるのです。会計上では“漠然”は許されず、常に数値で表現しなければならない。英米法ではこの度合いを、確率を約80%と解釈している。大陸法では恐らく約50%ではないでしょうか。
Contingent liability不確定債務
その一つがcontingent liabilityの問題です。偶発債務と訳す向きもありますが、私は不確定債務と訳しています。IAS 37とSFAS 5がcontingent liabilityの会計処理方法を説明していますが、両方とも引当金を算入しない事は同意しています。しかし、将来、支払いの必要性が皆無でないならば、この種の債務は脚注にての開示が必要です。IASでは発生の度合いが50%以上ですから、60%の場合、米国財務会計基準では開示はしないことになります。その会社が過去の出来事、事象の結果から現在債務を負い且つ資金の支出がprobable,プロバブルであり、且つ又その支出額が「reasonablyに」、相当に推定出来るなら、「provision」引当金は記帳されべきである。
Reasonable
ここでも法律用語、reasonableが出てまいります。要するに、思慮分別のある、一般会計人の普通の会計士判断に合するということを意味する、広い範囲の表現と解釈します。だから、これが50%と80%の差なのかもしれません。どうしても会計原則を正しく理解するには原則の中によく使われる言葉の、そして表現の真の意味を理解することが大切になります。米国財務会計基準は英語で書かれているわけですが、どこの国でも同じ事とは思われますが、会計は会計、コンピューターはコンピューター、法律は法律の各々の分野で、同じ英語で書かれていながら、その書き方、スタイル、vocabularyに各々特異性が見られます。特に法律、税法は独特な書き方と表現があります。会計分野は、幸い、表現がそれほど独特ではありませんが、どうしても法律の分野から抜けきれませんから、法律分野のvocabularyが入り込みます。
Exchange transaction
そしてそれが厳密に法律用語として使われるのではなく、会計処理上の表現として使用されますから、少々面倒な面があります。例えば、exchange transactionという表現がありますが、Meaning of exchange transactionと問われれば、会計上ではこの意味は“物と物との交換”という意味よりも、通常の“商取引”と解釈するべきです。ところが米国の税法ではこの言葉は“物物交換”の意味であり、お金以外の物との交換を意味するので注意が必要です。疑問に思われる方は次の法例を参照してください。Helvering v. William Flaccus Oak Tree Co., 313 US 247 (1941)を参照してください。会計上ではExchange transactions are transactions in which one entity receives assets or services, or has liabilities extinguished, and directly gives approximately equal value ( primarily in the form of cash, goods, services or use of assets) to another entity in exchange. 会計上ではNon-exchange transactionと云うと例えば“税金”の支払い等がその例です。
Reasonable and probable causeに関して:
英米法の世界ではreasonable and probable causeという表現がありますが、日本語訳は「合理的且つ相当な理由」と訳されていますが、この英語表現にはもう少し具体性があるようにおもいます。このprobable と云う言葉は米国憲法第4条の改正にprobable causeとして出てくるほどよく聞く言葉ですが、英国の法律学者Bryan A. Garner氏の説明にあるようにprobableの意味を理解させるために三段階の言葉を紹介しています。Probable; Likely; Possible.の三つの単語で、力の強さが減っていく順に並べてあります。強から弱への順序です。“何かがおきますよ!”(何かが起きる)という相対的可能性の段階を表現しています。さいころを振って、6がprobably「十中八九」に出るとはいわないでしょう。6が出るのはlikelyかもしれない。6が出るのはpossibleです。いかがですか。Possibleという言葉の範囲は一番広く、起きる可能性が0から100%だとGarner教授は説明しています。つまり曖昧な表現なのです。Probableは重く受け止めましょう。 Every thing is possible. なるほど!
More likely than notとは?
「more likely than not」この表現にであった方は多いと思います。この表現の特徴はmoreとthanを組み合わせる文章の特徴もあるのですが、実はポイントはそこにあるのではなく、「likely」という言葉の意味にあります。評価損額の引当金などを決めるときに使われる表現ですが、数値化が仕事の人達には苦痛です。そこで法律用語の大家Garner教授の辞書
近代法律用語の使い方に救いを求めますと曰く「likelyは微妙な違いを持っている。1から10のスケールで云えば5の上に位置する確率の度合いを往々にして示唆している。無論、likelyの前にquiteとか、very, extremely等の修飾語を付ければ5の上に位置する可能性はさらに大きくなる。それでいて、同じスケールで5以下の可能性を暗にほのめかしている。」またGlanville Williams教授が犯罪法の教科書で述べているように、likelyとは「強いpossible」であり、「弱いprobable」なんだと。
数字を考える:
会計の目的は最終的には数字で表現しなければならない。表現の仕方にも微妙な差がある。言い換えれば会計の世界ではa bicycleはbi cycleであり、2輪車です、自転車ではない。そうはいっても、an octopusはocto pus、つまり、“八足”と訳して、会計的表現ですと云っても何が何だか解らない。タコと云われて初めて意味が鮮明になってくる。それでも、”タコ“と聞いて、時と場合ではあの寅さんの隣人の印刷会社の社長さんを連想する人もいるでしょう。それでも、人間の行う商業上での取引を終局的には数字で表現することにより、少なくとも事の大小を明白にし、国は異なっても正しく価値を比較出来る土壌を創造する事に使命があるのかもしれません。数字,number,この言葉もan indo-europeanに語源がありshareとかdivision、つまり、土地などを”分け合う“という意味であったと云われています。心、暖まる説明です。しかし、numberのnumbだけを考えると古代英語では”つかみ取る“、”ぶんどる“であります。歴史的にはこれも土地の話です。北方領土問題が心に浮かびます。
資産とは何か?
IASC(International Accounting Standards Committee)
資産という概念をどう定義しているか?資産、asset,この意味をどのように考えるかはそれを考える人の立場によっても異なってくる。投資家や企業買収の立場で決算書を読めば、この土地は、この資産は今、幾らだろうかの“現在の価値”が資産価値、つまり“財産としての価値”として計算するでしょうし、企業を保有している株主の立場からみれば、資産は“将来のさらなる資産”を、“力”を、“経済的な利得”を生み出す“根源”を金額で表現した結果ととらえるでしょう。また英語圏だけを例にとっても以下のようないくらかの、微妙な表現の違いがあります。
IASC(International Accounting Standards Committee)国際会計基準
An asset is a resource controlled by the enterprise as a result of past transactions or events from which future economic benefits may be obtained,
資産とは過去における取引とか将来的に経済的な利益が得られるような出来事の結果として、その企業によって管理操作される資源である。
資産は資源だ。物理的な形態並びに所有権は資産の実在に関しては極めて重要ではない。不可欠な要素ではない。経費の発生と資産を生み出す、この両者には密接なつながりがある。しかし両方が同時に発生するとは限らない。資産を物理的に定義している様に考えられます、下記のアメリカの定義とは異なる観点です。
英国
Assets are rights or other access to future economic benefits controlled by an entity as a result of past transactions or events.
資産は権利だ、いや将来の経済的利得へのアクセスともいえる。一見、簡単な定義のように見えますが、まず、transactions or eventsの意味ですが英国では会計にこの表現が使われますと次のような意味になります。Event、イベント、この言葉の意味、 聞き慣れた言葉ですが、帰結をもたらす出来事、結果よりさらに堅い、堅実な帰結をもたらす出来事。どんな出来事かと云えば資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事。これがイベントです。このような原因や根源が外的要素によるものか内的要素によるものかは問いません。これを称してイベントと表現します。そしてtransactionとは取引なのですが、外部の2社以上との間での移行又は交換を伴う外部とのイベントを指します。従って“資産とは過去の取引や資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事の結果として、ある企業実体によって会計上管理されている将来の経済的利得や権利である。”上記のcontrolも恐らく15世紀頃の中世のラテン語 contrarotulare(会計帳簿を管理する)とかcontrole(会計帳簿)の意味を内蔵していると考えます。英国もご存じのように1066年、William公、Duke of Normandyが英国を征服して以来、俗に言うNorman Frenchという言葉が法律用語の中に見られ、例えばfee(封土権、相続可能財産権)とかtenir,これが(Tenure)(王の土地を預かり、使用する権利)であったり言葉には歴史が内蔵されています。そして長い間、欧州人は土地を、不動産を自分のものとして所有(own)したことはなく、不動産は国王の所有物であり、これを預かり・所有(possession)していたに過ぎない、したって、この結果、価値(value)に対するコンセプトが土地を、不動産を個人が所有し得るようになった現代と異なると筆者は考えています。
米国
Assets are probable future economic benefits obtained or controlled by a particular entity as a result of past transactions or events.
強い商業上の利得だ。入手又は管理できるほぼ間違いのない将来の利得である。
単なる利得ではない、いくらかの不確定要素を含んではいるが、ほぼ確実な、将来の利得だ。(Probableに関しては後述します。)ここでは英国法を継承した國ですから、表面の意味で解釈しますが、米国の資産に対する考え方はもしその企業が通常にその利得を入手・管理出来るのであれば、その入手した利得への請求権を法的に履行、強制できる事がその利得を資産として認める前提条件ではない。その他の関係はあるが、不可欠な条件ではない特徴と云えば原価取得とか、有形であるとか、交換可能等がある。資産を法的な観点から定義づけているように考えられます。物理的なものと見るより、法的に入手・管理出来るベネフィットであり、資源、a resourceとは直接、言及していない。
カナダ
Assets are economic resources controlled by an entity as a result of past transactions or events from which future economic benefits may be obtained.
資産は経済的資源だ。
豪州
“Assets” are service potential or future economic benefits controlled by the entity as a result of past transactions of other past events.
資産とは将来の経済的利得並びに潜在的なサービス業務
以上が英語圏ですが、ここに、ドイツやフランス、そしてスエーデンという深い哲学的な思考をもった諸国が入ると“資源”や“利得”ではおさまらないかも知れません。明治23年(1890)に始めて商法典が成立した日本も色々と大変でしょう。
Past transactions and eventsに関して:
Transaction or eventと云う表現が会計 法律用語の中でよく出てくるが、会計人にはtransaction,(取引)は理解が行くが、これをeventと併用して使われると何となくeventにたいして違和感がある。このeventという意味は会計や法律書の中では(訴訟の結果)と云う意味を含む、会計上、重要な出来事という意味から、(e)=外へと、(vent)=ベント、“排出”、“出ていく”から両者を足してe+vent=event. 外へ排出、外へ出てくる、つまり中で起きた出来事。兄弟用語にaccident事故、incident(小さな出来事)がある。法律の表現としてよく使われるin the eventとなると米語ではif、(もしも)の意味が強く、しかしifよりは弱い。英語ではin the event, 又はin the event ofとして表現され、“その結果”、と云う意味になる場合が多々あるから要注意です。無論、これは文学上の話ではない。会計取引と会計上の出来事です。さらにeventの意味を掘り下げていくと、この言葉の意味、イベントとは帰結をもたらす出来事、結果よりさらに堅い、堅実な帰結をもたらす出来事。どんな出来事かと云えば資産、負債そして資本に変化を起こす原因並びに根源となるような出来事です。これがイベントです。このようなイベントの原因や根源が外的要素によるものか内的要素によるものかは問いません。これを称してイベントと表現します。そしてtransactionとは取引なのですが、外部の2社以上との間での移行又は交換を伴う外部とのイベントを指します。
負債とは
国際会計(IASC)(International Accounting Standards Committee ·)
A liability is a present obligation of the enterprise arising from past events, the settlement of which is expected to result in an outflow from the enterprise of resources embodying economic benefits.
負債であることの主要な特徴はその企業が現時点での契約、約束、立場上などから生じる債務を、抱えている。そしてそれらの契約、約束、立場上からの債務は過去の時点で発生したものです。将来の時点で資産を取得しようとする判断は又は決断は現時点での債務を生じさせません。では、債務は何時、生じるかといえば、その資産が配達された、受け取った時点又はその資産を購入するべく撤回不能なアグリーメントを結んだ時点です。国際基準はこのような立場を示唆しています。要約すれば、過去の時点で発生した契約上の、約束をした事象の現時点での支払い義務、これが債務であるとしているのが国際会計法です。
英国
Liabilities are an entity’s obligations to transfer economic benefits as a result of past transactions or events.
負債とは過去の取引またはイベントの結果のため、経済的利得を移行する、その企業の義務・責任であります。
簡単明瞭に見えますが、前述しましたようにtransactions or eventsという表現の中に広い範囲を包み込み、それらから生じた経済的利得の外への移転義務を負債としています。負債とは利得の減少であるとでも叫んでいるように見えます。
米国
Liabilities are probable future sacrifices of economic benefits arising from present obligations of a particular entity to transfer assets or provide services to other entities in the future as a result of past transactions or events.
過去の取引やイヴェントの(広い意味を持ってますよ)結果のため、将来の時点で、他の企業に、資産を移転するか又はサービスを提供する現段階における義務・責任から生じる、ほぼ確実な未来における経済的犠牲を負債と称する。ここで、probableなる表現に留意してください。具体的に表現すれば確率として80%以上起きうる自称を意味しています。
企業は将来の犠牲を避ける選択の自由はない。しかし負債の一般的な特徴の中で主要ではない特質は現金での支払い義務とか、支払先の正体を知ることとか、法的執行度合いなどです。つまり負債とは避け得ない犠牲を指すが、負債を認識する要素としてこのような負債の特徴まで認識する必要はないとしています。
次回はrecognitionとrecognitionのcriteriaから流動資産を初めとする各会計項目の説明に入ります。
上田 稔 CPA 著